異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。

2019年4月に読んだ本、参加した読書イベント

 大型連休、諸事情で長期間の旅行までは出来ないものの幸いかなり休みが取れたので第14回名古屋SF読書会に参加。課題本は山田正紀『宝石泥棒』。
 (さすがに有名な作品なのでそのまま書いてしまうが)全体の構成としては異世界ファンタジーのように見えて実は・・・、というつくり。有名な作品ながら実は初読だったのだが、長年の強者SF読者でも同じく初読という方が散見されたのは意外だった(それなりの厚さと独特の難読漢字が並ぶタイポグラフィックが敬遠されたせいだろうか)。主人公の意志の弱さや解決力の乏しさへの不満があった。前者については作者がアンチヒーローを描こうとしていたと指摘されていた(この辺りはいわゆる日本SF第一世代が基本的な土台を作り上げた後に登場した第二世代としての屈折が現れているように思われる)。また異世界巡りの割にバリエーションが少ないことも物足りなさとして言及され、それも本来は描く予定があったようだ(他作品『超・博物誌』に使われなかったアイディアが流用されたのではないかという話が出たが、続編『螺旋の月』にも使われているのではないかと思われる)。ただ今でこそ異世界を生態系までふまえて創造する作品も珍しくないが、まだ日本では当たり前ではなくネットもない時代に作者は30歳以前(28歳?)にこのような作品を作り上げたことには驚きの声があった。作者はいまだに作品を発表し続けているが、その時々の時代の動きに呼応している作家でもあり、歩みを追うことにより日本のSFの歴史が見えてくるような貴重な存在ともいえる。ちなみに今回ついでに読んだ『螺旋の月』は1989年連載で今度は大きくコンピュータがアイディアとして組み込まれている。異世界のアイディアを加える部分と現代部分のミステリ的な部分の比重がはっきりせず散漫な印象もあるが、果敢なチャレンジを続ける姿勢が支持を集める理由の一つだと思われる。(あと積んでいた『氷河民族』も読んだが、こちらは懐かしい感じの伝奇SFでワンアイディアの軽い娯楽作品)
 その後2次会3次会まで参加、音楽などいろんな好き勝手なお話を聞いていただきほんとうに楽しい連休の始まりになった。皆様ありがとうございました。

さて相変わらず読書は全体としてあんまり順調ではないが。
『ビット・プレイヤー』グレッグ・イーガン
 テクノロジーが人間をどう変えるか、という考察を科学的に踏み込んで行える点で貴重な作家だが、特に短編でその力が遺憾なく発揮されることを今回も証明。特に「七色覚」は多くの読者の支持を集めそうだ。
『巨星』ピーター・ワッツ
 実はイーガンより年上なのだな。こちらも人間とテクノロジーの関係を追及した点でイーガンと重なる作風だろう。翻訳では初短編集で日本オリジナルということでべスト的な作品集なので粒揃い。非常に面白かった。
天守物語』金子國義/画 泉鏡花/作 津原泰水:監修
 名古屋遠征で岐阜の古書店でゲット(この徒然舎、海外文学・怪奇幻想・ミステリ・SFなどに強く素晴らしいところなのでおすすめ。非常に状態の良い乱歩の昔の本は高額だったが、まだ出版された当初の読者の興奮が伝わってくるようで古書マニアがいるのがよくわかる気がしたなあ。コワいので手は出しませんが(笑)。金子國義の洋画と鏡花の世界のミスマッチがなかなかユニーク。澁澤が指摘した「垂直方向」の物語としての側面を切り口にした監修者津原泰水の解説も素晴らしい。
『郝景芳短篇集』
 「折りたたみ北京」の作者(本書では「北京 折りたたみの都市」)。エクス・リブリスから短編集が出るとは思わなかった。物理学専攻の一方で社会科学の学位も取得しているという多彩なキャリアが融合した作品集になっている。