異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2019年3月に読んだ本

もろもろあってかなり少なめ。
渚にて』ネヴィル・シュート
 破滅SFの中では静かに終末を迎える人々を描いていることで知られる。パニックに陥らず日常を送ろうとする主人公たちの姿は美しく切ないが全体的なトーンは古いハリウッド映画のように感じられてしまう面もある。
『二壜の調味料』ロード・ダンセイニ
 『ぺガーナの神々』 と課題図書にしたkazuouさんの怪奇幻想読書倶楽部第20回読書会に参加(毎回ありがとうございます!)。ダンセイニは数冊しか読んでいないんので著作の量からするとほんの一部で明るくなかったので、今回は長年ダンセイニを研究しておられた方々の参加もありいろいろ詳しいこと知る機会になった(荒俣宏さんのセレクションのセンスについなど)。『二壜の調味料』はユーモアが基調でホラ話(あるいはバカミス)的に読む、あるいは語り口を楽しむ本なのかなあという思った。そういう意味で変な話が多いのだが珍しく少年が主人公の「ラウンド・ポンドの海賊」がなんともいい味が出ていて好み(あと「新しい名人」は早期のロボットSFでなかなか貴重)。
『宝石泥棒』山田正紀
 久しぶりに名古屋SF読書会に参加するので読んだ。名高い日本SFの名作だが初読。山岸真解説にあるようにSF視点からの異世界ファンタジーというタイプの小説は他にもあるが異世界を描きこんでSFアイディアを処理するという点で本格的に取り組んだ作品はなかなかないのではないか(しかも連載された1970年末で)。『地球の長い午後』にインスパイアされていることも知られているが、その分熱帯的な部分がより魅力的に感じられる。一方で東洋的な要素が強いのも特徴、また反骨精神あふれる主人公もまた作者らしさである。