異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。

2019年1月に読んだ本

『ドラゴン・ヴォランの部屋』J・S・レ・ファニュ
「ロバート・アーダ卿の運命」ある人物の呪われた運命が二つの視点から描かれる。話自体の出来もよいが、ジャンルの分化が進んでいない時代の書き方としても興味深い。
「ティローン州のある名家の物語」裕福な男性の元に嫁いだ娘が謎の女に悪意に満ちた言葉を浴びせられる。ニューロティックな味わいは現代的といってもよい。
「ウルトー・ド・レイシー」アイルランドの古城に住む一族の物語。アイルランドの歴史が織り込まれた怪奇趣味寄りとはいえアイリッシュ・ファンタジーといった印象の方が強い。余韻の残る結末も素晴らしく集中ベストと思う。
「ローラ・シルヴァー・ベル」カークばあさんに可愛がられていた少女ローラの物語。残酷童話風の雰囲気が良い。
「ドラゴン・ヴォランの部屋」主人公の青年の周囲で発生したとある部屋での失踪事件がきっかけとなるサスペンス小説で、これも面白い。怪奇幻想小説の重要な要素である描写力に定評のある作家だが、多少細部のつくりこみが甘くても次々エピソードが連なっていく中編小説の筆さばきの方に本領があるのではないかと思うほどだ。
全体に質の高い短編集だった。
ケルトの薄明』W・B・イェイツ
 レ・ファニュのケルト的な要素はどのあたりになるのかと思い、前から積んでいたケルト関係の本からまずこれを読んでみた。アイルランドでは妖精のような存在が身近な存在でその良い面を伝えているというような点が興味深かった(一方でスコットランド人はそういった面を歪めているとディスられている。「34 幽霊や妖精の性質を歪めたスコットランド人への苦情」にそれがあるが、タイトル書き写したらかなり直接的なタイトルだった(苦笑)全体として包括的なケルト文化論となっているわかではなく断片的な記録だが、イエイツ自体が150年以上前に生まれた人であり、貴重な情報である。
『不気味な物語』グラビンスキ
 集中ベスト3に「弔いの鐘」「視線」「情熱」を選んだがプレゼント抽選外れちった・・・(詳細は感想はいずれ)。
『終の住処 』磯崎憲一郎
 表題作はとある夫婦の結婚生活の変遷を夫の視点から綴ったものだがどこか感覚の欠落した記述が非常に滑らかに巧みに描かれていているところが見事だった。一方「ペナント」は一読では手がかりがつかめなかった。再読したい。
『海街diary9 行ってくる』吉田秋生
 ついに最終回を迎えてしまった。収まるところに収まった結末は特に意外なものではないが、鎌倉に転居した頃にスタートした作品は青春時代ストレートに主人公に感情移入していた『河よりも長くゆるやかに』とはまた違った形(今回はどちらかというと中学生たちの親側からの視点)で私的に思い入れの強い作品となった(近年暮らしている鎌倉の現在の映像記録となる映画もあったしね)。吉田秋生という漫画家に同時代に神奈川県出身者(そして生活者)として出会えた喜びをしみじみ感じている。