異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

<由紀さおり 50周年記念公演>を観てきた

ちょっときっかけがあって、さる1月11日に観てきた。
www.meijiza.co.jp

もちろんこうしたいわゆる歌謡ショウは初めてである。かろうじて一番近いのは2013年の浅草公会堂の<横山剣 大座長公演>か。

さすがにお客さんはかなりの高年齢層(笑)。
明治座はちょっと変わったつくりになっていて、1階は入り口のみで2階もラウンジがメインで3階から5階が客席。
3階(客席としては1階席にあたる)の売店がえらく活気がある。人形焼きとか漬物とか売っていて(もちろん由紀さおりをはじめとする出演者のCDも売ってる)、そこでお土産を買うのがお客さんの楽しみなのだろう。
第一部は1960年代を舞台にしたお芝居。前回の東京オリンピック前あたりか。由紀さおり演じる下町の食堂の女将さんをめぐってのオトナの三角関係を軸とした人情喜劇である。三波伸介中村メイコNHKの「お笑いオンステージ」でやっていた「てんぷく笑劇場」とかのアレである(といっても50代以上にしかわからんだろうが・・・)。とはいえ細部は今の時代らしくところどころベタさがやわらげられているところはさすがにちゃんと考えているのねえという感じがした。古い有名な映画の台詞を多く使っているところ、映画の斜陽がはじまったちょっぴり寂しさとか映画の思い出みたいなものがメインに据えられているところが客層のニーズなのだろうなとか思ったり、伊勢湾台風でひどい目に合うといったエピソードがあったりするところの時代背景とかなるほどと思ったり、こちらも年の功ですんなり楽しめてしまう。
さてそのあといよいよお待ちかねの歌のステージである。
第二部はベイビー・ブーというコーラス・グループ(歌声喫茶からの叩き上げらしく、今も歌声喫茶が機能しているらしい!)とのコラボ。自身の曲、スタンダードや青春歌謡のカヴァーと軽々とこなし年齢を全く感じさせない。やっぱりitunes全米ジャズ・チャートで1位にも入った「1969」にも収められている「真夜中のボサ・ノヴァ」が良かったかな。多少アレンジは違うがようつべっとく。

youtu.be
第三部では三人の若手イケメン歌手パク・ジュニョン山本譲二の弟子)、川上大輔(声が高いというのが売りで森進一っぽい)、中澤卓也(のど自慢出身、2017年デビューの最若手)が登場し、それぞれに熱心なファンがついていて歓声が上がっていた。後進を育てるという重要な場なのだろうなあということがよくわかる(慣れていないものだからこの3人の曲が続いて、これから知らない人ばかりになったらどうしようかと若干不安になったのも事実だが(笑)。
ちゃんと「夜明けのスキャット」やったのには立派だなと思った。山下達郎が「(オタクのファンはいろいろいうだろうけど)一生に一回しか僕のコンサートを観ない人もいるはずだから、必ずクリスマスイブは歌います」といっていたのが印象に残っていて、同じ考えではないかという気がする(まあ予想を裏切り続けるボブ・ディランのようなやり方が悪いわけではなく、そこはタイプの問題だろう)。
一方で最後の曲は「あなたにとって」というアンジェラ・アキの曲で、今回新譜は若い世代に自分の歌がどう受け取られるかということを考え、年若い世代にオファーを出してできた曲の一つだそうだ。これを由紀さおりのコンサートの最後に皆で歌うような曲にしていきたいとつくったというアンジェラ・アキのやる気もすごいがそれを実際に50周年記念公演で最後に歌う由紀さおりのチャレンジ精神もすごいなと思った(まあ別にアンジェラ・アキが好きというわけではないのだが)。長年歌謡の世界で一線で活躍してきた人というのはこういう人なのだろう。
さて由紀さおりがどういう歌手なのかということで、印象に残ったシーンがあった。自らのキャリアを振り返る上で影響を受けた歌手として越路吹雪美空ひばりを挙げていた。つまりシャンソンの洋風な都会性と第一部の芝居のような庶民性をあわせ持っている、それがこの人の稀有なタレント性なのだ。世界的なヒットを飛ばしたのも音を通じてリスナーがその個性を感じ取ったのに違いない。(「りんご追分」で間違ったところを堂々とやり直した落ち着きぶりも伊達ではないとも思ったが)