異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

2018年10月に観た映画、イベント、美術展

カメラを止めるな!」(2017年)
 これは正確には9月末に観た。判通りで非常に面白かった。芯となるアイディアの素晴らしさもさることながら、ディテールや俳優の個性など肉付けがしっかりしていてそのアイディアをより効果的にしているところが勝因。
エッセネ派」(1972年)
 アテネ・フランセ文化センターでフレデリック・ワイズマンの特集をやっている。ドキュメンタリー映画作家として名高く、個人的には殊能将之氏のHPで高い評価をしていたことが印象深くいつかは観たいと思っていた。が、結局今のところこの1本しか日程的に無理だった。そもそもこのエッセネ派がちょっと検索しても意外とどういった宗派か難しくて2009年カナザワ映画祭での照会には「死海文書を作成したとされるキリスト教以前の古代ユダヤから存在した禁欲的な集団」と書かれていてまあこのあたりだろうか。描かれるのは敬虔な集団の修道院の日常であるため、常に宗教的なディスカッションが行われるなかなか地味な内容である。ただ問題のある人物による厄介な人間模様などあまりに生々しく身近で苦笑させられる。もう1本ぐらいは観たいが、なにせ公開時期が短いので日程が合うか微妙・・・。

楽しいSFイベントを継続して開いているLive Wire。とはいえ1年半ぶりかな(前回はたぶんこれ)。10/13に最新海外SF情報のイベントがあったので参加。印象的だった話を羅列。
ヒューゴー賞ボイコットを行った、保守的な(というより人種差別的女性差別的な)価値観のSFファングループSad Puppiesらの周囲をめぐる状況。コミックなど他のジャンルでも似たような傾向の動きあり。SF関連では表向きは沈静化しているもののくすぶり続けているっぽい。
・ファンタジーとSFの境界は日本よりボーダーレス。
・日本の海外SF受容においてハードサイエンスへの偏りがあり、社会科学的なものの紹介が十分されていないのではないか。
・ミリタリーSFならぬミリタリーファンタジーも沢山ある。(知らなんだ)
・最近のSF作家にみるジャック・ヴァンスの影響の大きさ。異世界構築のツールとしてのSF。(ヴァンス好きなのでうれしい)
・紹介された作家など。Yoon Ha Lee、Martha Wells、N.K.Jemisinなど。アニメ好きの作家が多いのではないかとかJonathan Strahanのpodcastの話など。(N.K.Jemisinのヒューゴー3連覇,Broken Earth seriesの翻訳は楽しみ)。

10/27には2つの美術展。
マルセル・デュシャンと日本美術」@東京国立博物館
 先に書いておくと日本美術の展示はさほど多くないです(笑)。とはいえ内容は面白いです。どちらかというと前衛芸術運動のイメージが強いが、実はキュビズムをスタートとしていて例えば藤田嗣治とほぼ同世代(パリとニューヨークを活動拠点にした点でも共通するが、どうやら時期的にはすれ違いの関係だった様子。フランス生まれながらアメリカンを活動拠点にしたデュシャンと日本生まれながらフランスに帰化した藤田はスタイルの違いこそあれともに放浪のイメージをまつろう)。言語へのこだわりとチェスというの重要な要素であることが印象深かった。というと当然ナボコフで、この本若島正氏が評しているところもつながりを感じさせる。文学サイドでのデュシャンの分析も重要になってくるのかもしれない。
寺山修司展 ひとりぼっちのあなたに」@県立神奈川近代文学館
 昭和生まれの世代ながらなかなか手をつけられなかった寺山修司だが、山野浩一への影響の大きさということでだんだん興味がわくようになってきた。とにかく圧倒されたのは幅広い分野と膨大な仕事量だ。早世である上に若いころに長期の入院期間もある中でだから驚異的。特に非日常的なもの・日の当たらないものへの好奇心や憧憬は多方面への深い影響を与えただろうと思われる。その影響はあまりに広く及ぶため、その全貌が明かされるのはまだまだこれからだろう。

TVで観た映画も追記しておくか。
「クライム・アンド・ダイヤモンド」(Who Is Cletis Tout?)(2002年)
 序盤、毒舌ジム(Critical Jim)と名乗る男が椅子に縛りつけられている男に映画の蘊蓄を挟み込みながら尋問をしているという妙なシチュエーションから始まり、だんだん背景が明かされていくという仕掛けのミステリーで、(細部までは追えなかったが)映画マニアネタをアクセントに伏線がうまくはまっている洒脱な作品でなかなかの傑作。
「無宿」(やどなし)(1974年)
 フランス映画の「冒険者たち」(未見)をもとにした前科者のロードムーヴィー。高倉健勝新太郎梶芽衣子と豪華な顔ぶれだが、話も映像も特にこれといったものはなく残念ながら顔見世だけで終わっている、まあよくあるタイプの残念作。安藤昇も出ている。