異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

2018年4月に読んだ本、と読書会

あっちこっちつまみ読みしたが・・・全体としては低調モード。
あ、読書イベントには参加して面白かった。
ドン・キホーテ』 前編一・二 セルバンテス
 遅々として進まないが、なんとか読了したいシリーズの一つ(笑)。いや面白いですよ。周囲がドン・キホーテを欺くところや小説内小説『愚かな物好きの話』自体が演技と本心がすり替わるような話で、虚と実に意識的かつ高度な分析がなされていてセルバンテスの驚くべき先駆性がわかる。
『半分世界』石川宗生
 話題のようなので読んでみた。これはユニークな作家の登場だ。
「吉田同名」大量に分裂した人物について形而上学的な奇想に発展していくところがユニーク。
「半分世界」突然半分になった家で暮らす家族。生活が丸見え状態となり、否が応でも住民の興味をかきたてる。意表をつく発想でこれにも驚かされた。
『見えるもの見えざるもの』E・F・ベンスン
 当時のテクノロジーが題材に取られることが多く、理知的だが降霊術はよく登場し死後の世界との交信というテーマに強い関心があるようだ。また画家と酒も題材として好まれている印象。以下◎が気に入った作品。
◎「かくて死者は口を開き」死者の再生と脳科学のイメージが重なっているマッドサイエンティストもの。蓄音機が脳の記録というアイディアに形を与えているのが興味深い。
「忌避されしもの」美しいが恐ろしさがあるという女性嫌悪的な小説は他にもありそう。(※下記の読書会ではもっと異形なものとしての側面が深い読解がなされていた。読み直す必要がありそうだ)
「幽暗に歩む疫病あり」呪われた土地というパターンだが、ストンと落ちがつく。
「農場の夜」妻に殺意を抱く男。正調怪奇小説といった印象。
「不可思議なるは神のご意思」ファムファタールをめぐる駆け引きという古典的な骨組みに人工湖という近代的な物が不協和音を軋ませる。
「庭師」これも古い家、霊応盤といったストレートな怪奇小説
◎「ティリー氏の降霊会」作者の死後の世界への関心がうかがわれる作品でユーモラスなところもある。
「アムワース夫人」吸血鬼ものにエキゾチズムが重要な要素であることがわかる。
「地下鉄にて」1922年の作品(もう地下鉄はあったのか)。鉄道ホラーの系譜。
◎「ロデリックの物語」しんみりとした切なさが心に残る怪奇小説。こちらも死後の世界とのつながりがテーマになっている。
 そしてこの本を課題図書にした4/13双子のライオン堂で行われた<~幻想文学集中ゼミ~〈ウィアード〉な世界への招待状~>(コーディネーターは岡和田晃さん)にも参加。ベンスンの他の著作についてや作家一家の出である側面や当時の受容状況やラヴクラフトとの関連など詳しく知ることが出来た。岡和田さん参加者のみなさん双子のライオン堂さんありがとうございました。
地球の長い午後ブライアン・W・オールディス
 再読。古くからのSFファンで名作として名高い作品だが、初読は10代ではなく30歳前後だったのではないかと思う。なのである程度の記憶はあったが、思っていた以上に無茶苦茶な話で(笑)、科学的整合性がどうしたといわんばかり映像的なインパクトと限界までのイマジネーションを追求していることが再確認された。また奇妙な生命体やスケールの大きなアイディアとエピソードが次から次に詰め込まれ最後までテンションが落ちないところも驚かされた。
 こちらは名古屋SF読書会の課題図書。なんと3年ぶりの参加だった。ちなみに3年前のブログ記事↓

funkenstein.hatenablog.com

名古屋SF読書会はホスピタリティの高さが素晴らしく、幅広い層の方が参加しいろんな話題が楽しく展開される上にプロの方もいらっしゃるのでいきなりディープなところまで掘り下げられたりする懐の深さが魅力。いろんなお話が出来て、さらにtwitterでも話題が進んだのだが、個人的にはオールディス流の神話の再構築といった要素があるのではないかという話題をその時提出させていただいた。一方でオールディスは無神論者ということらしく、そうなると「神なき時代の神話」ということになるのだろうかとかつらつら考えたり。あと60年代に書かれた本書の主人公グレンは同時代の反抗する若者が背景にあるようだが、オールディス自体はそれより上の世代なのでその辺の距離感がややつき離したような描かれ方になっているのではないかということを考えたりもしていたが、これは読書会ではお話しするのを忘れてしまった(そもそも全体が社会そのものを戯画化しているということなのかもしれないが)。
あとは伊藤典夫訳の凄さ!電書のHothouseを購入し、ちょっとチェックしてみたんだがDumbler黙(ダンマリ)をはじめチョイスが絶妙。あらためて驚かされた。
今度は3年経たないうちに参加したい。
そうそうついでに読んだオールディス作品。
『隠生代』 "2070年代の人類は、ついに画期的な時間旅行法―マインド・トラヴェル―を発見した。CSDと呼ばれる時間移行誘発剤を飲めば、精神が肉体の束縛から解きはなたれ、過去へと飛べるようになるのだ。(中略)シルヴァーストーンによれば、時間は過去から未来へと流れているのではなく、じつは未来から過去へと流れているというのだ!(後略)”といった裏表紙のあらすじを読むとバリントンベイリーみたいな小説を期待しちゃうでしょ。書き割りのようでしかも古めかしい登場人物、割と限られた時代を行ったり来たりするだけのスケール間の乏しさ、架空にしても論理がゆるすぎて一読ではなにを表現したいアイディアなのかわからないという具合でかなり残念な出来。実は『地球の長い午後』より後の時代の作品ということなので、技術的なことよりもパッションの問題の方を疑う(苦笑)。(ちなみに名古屋SF読書会で自分のところの班の司会をつとめて下さった渡辺英樹さんも「あらすじは面白そうだがつまらない」とおっしゃっていた(笑)
『爆発星雲の伝説』以前からアイディアの豊富なオールディスは中短編の方が面白いと定評があり、今回読んでみた。遠未来だが貴族社会風味の人間ドラマが不思議な味を醸し出している「一種の技能」、自身の戦争体験が描写に重みを加えている「心臓とエンジン」、言語実験的な「断片」、オフビートなSF冒険小説で(浅倉訳のためか)意外にもヴァンスを彷彿させるタイトル作、異様な生物を描くと真骨頂が発揮される著者らしい名作「讃美歌百番」と思いの外バラエティに富んでいる傑作短編集だった。インド映画の大家でも知られるフモさんが素晴らしいレビューを投稿されているので是非。
『爆発星雲の伝説』 ブライアン・W・オールディス - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
ちなみにこの本、第10回怪奇幻想読書会の本の交換会で主催のkazuouさんからいただいた本なのだ。あらためてお礼を申し上げたい。

「唾の樹」(『影が行く』収録)も再読してみた。こちらは傑作『解放されたフランケンシュタイン』のようにオマージュものを得意とするオールディスの長所がよく出たウエルズ『宇宙戦争』オマージュものでやっぱり傑作。とりあえずその『解放されたフランケンシュタイン』に『モロー博士の島』と『ドラキュラ』のオマージュ作品が入ったThe Monster Trilogyというのがkindleにあったので買ってみた(いつ読めるかは不明)
https://www.amazon.co.jp/Monster-Trilogy-Brian-Aldiss-ebook/dp/B00C8Y3AOE/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1525091873&sr=8-1&keywords=kindle++the+monster+trilogy