異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

2018年3月に読んだ本

『鉄の夢』ノーマン・スピンラッド
 途中まで読んだ状態で数年放置していたがようやく読了。アメリカに渡ってB級SF作家になったアドルフ・ヒトラーが書いた「鉤十字の帝王」とその解説からなる、改変歴史ものの入れ子構造で有名な作品。もちろんこの「鉤十字の帝王」は安っぽく歪んだ小説として作られているのだが、ソ連に支配された世界の中で書かれた設定になってる解説の方もまたその政治観を括弧付きで読まなくてはいけないというひどくねじくれた作品でよくこんな考えるだけでも面倒な代物を形にできたなあとほとほと作者のひねくれたセンスに感心する。さらに書かれた後にソ連が崩壊してさらにまたもうひとひねり加わっているところも元々の発想の秀逸さゆえだろう。
『盤上の夜』宮内悠介
 囲碁、チェッカー、麻雀、チャトランガ、将棋にテーマをとり、現代社会に生きる個人の苦悩と世界認識といったスケールの大きいテーマにつなげていく、あまりに見事なデビュー作。鮮やかなアイディアとストーリーテリングの合間にのぞく勝負に生きる登場人物たちの孤独と切迫した心象風景が痛みと共に胸に響く。
『アメリカ最後の実験』宮内悠介
 アメリカを舞台にしたスピリチュアルな音楽小説。作者の一味違った一面が感じられる。
『ユートロニカのこちら側』小川哲
 『ゲームの王国』の前にひとまず読んでみた(いやそちらはいつ読めるかわからないがw)。人々が自ら入居を希望する高度な管理実験都市が成功しはじめた近未来。実存に関する精緻で切実な問いかけと秀逸なアイディアがバランスよく融合し、この作品もまたデビュー作とは思えない端正な連作長編。
『柔らかい月』イタロ・カルヴィーノ
 大きくは天体から小さくはミクロの世界、さらには幾何学まで自由自在。数理的なイメージあふれる奇想で抜群に面白い。カルヴィーノやっぱりっすげえ。積読していてはいけなかったw
『砂の本』ホルヘ・ルイス・ボルヘス
 再読。以前ぼんやり読んでいたせいか、「汚辱の世界史」などにピンとこない部分があったが、正史には描き切れないこの世界の不可思議さをとらえていこうというボルヘスのセンスがしっくりくるようになった。いろんなところから引っ張ってくるところはDJ的でもあるね。これまた今更だがやっぱりボルヘスもすげえw
『サピエンス全史』ユヴェル・ノア・ハラリ
 これね・・・。ホモ・サピエンスの進化に関する最新の研究を紹介した本だと思ってたんですよ。読み始めたらなんか違っていたんで随分時間がかかりました。まあ予想と違っていたんで誰のせいでもないです自分のせい。とにかく読み終えましたw
『動きの悪魔』グラビンスキ
 鉄道ネタというしばりにしてはバラエティに富んでいてグラビンスキはなかなかアイディアがある人だなあと感じる。ある意味幸福な鉄道の仕事に没入してしまった男を描いた「音無しの空間」、妙にエロティックで異様な熱量の「車室にて」、どことなくラヴクラフトっぽいタイトル作、マシスンのようなSFホラー「待避線」などが面白く、グラビンスキのセンスは先駆的で現代にフィットしていると思う。