異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2017年11月に読んだ本

変わらず低調・・・。

度々参加させていただいている、kazuouさん主催の怪奇幻想読書会
kimyo.blog50.fc2.com
でウェルズがテーマだったのでこれを機会に積んでいた本含めいろいろウェルズを読んでみた。

『未来を覗く H・G・ウェルズ ディストピアの現代はいつ始まったか』小野俊太郎
 小野俊太郎氏は文芸評論家でSFやホラーなどのテーマも多く手掛けており、以前読んだ『フランケンシュタインの精神史』
funkenstein.hatenablog.com
も非常に面白かった。本書もウェルズの 作品世界を幅広く解析した好著。特に当時の戦争との関連について論じた第4章には蒙を啓かれた。

『神々のようなひとびと』H・G・ウェルズ
 1922年。ふとしたきっかけで別の世界に入り込み、当時の現実世界との対比が行われるというユートピアもの。地球と他の星とを比較するというその後も見られるフォーマットを既に使っているウェルズはやはり早い。文明論的なところは時代のずれもあってか、読みづらかったりピンとこないもころもあるが、中盤のサスペンスなどはなかなかよく書かれている。

『神々の糧』H・G・ウェルズ
 似たようなタイトルだがこちらの方が随分古く1904年。開発された物質で生物が巨大化して騒動になるいかにもパニックSFっぽい前半だが、意外にも後半はそれを摂取した巨人と従来の人類の対立が焦点となる。テクノロジーの暴走とその対処という図式を超えて、人間の変質にまで話が及ぶ視野の広さがさすがである。全然関係ないが、「神々の糧」にラテン語版タイムズという記述があって、ウェルズの頃にはラテン語がそういった幅広いレベルで使用されていたことを知った。

三美スーパースターズ 最後のファンクラブ』パク・ミンギュ
 シミルボンに投稿
shimirubon.jp

『水から水へ』北野勇作
 ユニークな作品と作家そして企画を届けてくれる≪惑星と口笛ブックス≫
dog-and-me.d.dooo.jp
から短篇を販売する<シングルカット>シリーズが登場。インディーズらしく清新な空気を呼びこんでくれるところが嬉しい。
さて『水から水へ』だが、ドメスティックで懐かしいようなちょっと怖いような世界を構築する作者らしい作品で、いろんなイメージが連なっていく感じが心地よかった。最初の「水」、「釜」、「蛇」(想定外のものが出現するところがツボ)が特によかった。ところどころ終末感が漂うところも印象的。