異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

2017年10月に読んだ本

変わらず低調・・・(京都SFフェスティバルに行ったりして読書関係としては楽しかったのだが)。

『泰平ヨンの現場検証』スタニスワフ・レム
 世評高い作品で泰平ヨンの記述の不確かさが導入となっているようなあらすじからメタフィクションっぽさが前面に出ていることを予想していたが、どちらかというと様々な社会像についてレムの思索が爆発したユートピア小説で二つの世界が対比されるところは『所有せざる人々』を想起させる。細部に腹を抱える要素はあるが思索が凄すぎて一読では消化しきれなかったというのが正直なところ。

『火の書』グラビンスキ
 『狂気の巡礼』がよかったので早速読んでみた。煙突を舞台にした怪異譚「白いメガネザル」、呪われた場所に固執する男「火事場」、カルト化する精神病院を扱った「ゲブルたち」(レムの「主の変容病院」を連想させる)、特殊な嗜好性が背景にある「炎の結婚式」、民話風の妖しさが漂う「有毒ガス」など19世紀末生まれ(1887年)とは思えないぐらい現代的なテーマと洗練された技巧の作家でしかもバラエティに富んでいて本書もまた素晴らしかった。全体的に取りつかれた人物の姿が印象に残る作品でもあった。またインタビューでは理知的でかなりの論客であることがわかる。

波津彬子選集 1 鏡花夢幻』
 リアル書店で目にして、鏡花は恥ずかしながらほとんど読んだことがないので漫画なら今後の導入にいいかなと思い読んでみた。日本風土の叙情を西洋的な手法を取り入れて描いていたことというのが発見だった。

猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる』中村融
 以前にも突然オールディスが出たりSFファンを驚かせてきた竹書房文庫だが、この本の他にも最近ゼラズニイが出たり、<来年にはチャールズ・L・ハーネス The Paradox Men(中村融訳)、ルーシャス・シェパード〈竜のグリオール〉シリーズ短篇集(内田昌之訳)のほか、新作SFの翻訳や復刊企画も進行中です>なんという(特にオールドSFファンに)嬉しいニュースを届けてくれている。さて本書も大変楽しい猫アンソロジー。犬のお株を奪う孤独な男との友情ものダンヴァース「ベンジャミンの治癒」、カーニヴァルのどこか危険な魅力がはまっているスプリンガー「化身」、スタージョンらしいとしかいいようのない妙なドタバタ劇「ヘリックス・ザ・キャット」、未来の少女の日常から壮大なサスペンスへと展開するシュミッツ「チックタックとわたし」、短いがテンポのよい宇宙アクションのノートン「猫の世界は灰色」、様々なイメージに酔いどれの夢が見事に交錯するライバー「影の船」と粒揃い。

アンチクライストの誕生』レオ・ぺルッツ
 初ぺルッツだったが今年No.1の面白本だった。グラビンスキとほぼ同世代(1882年)でこちらも優れて現代的。ストーリーテリングが抜群で、前半とは予想出来ないくらいサスペンスフルになる表題作、ほろ酔い気分で歌に合わせて綴られやがて哀しい「霰弾亭」の長め2作、暗号もの「主よ、われを憐れみたまえ」が特によかった。他に「月は笑う」の怪奇趣味、「ボタンを押すだけで」のユーモア、実在の人物を扱った「夜のない日」のコンパクトな切れ味もいい。ラストの小品「.ある兵士との会話」はバルセロナが舞台になっていて、これまたタイミングがいいというかなんというか。

『透明人間』H・G・ウェルズ
 それなりにメジャーなモチーフでありながらどうしてもバカバカしさが払拭できず、映画化するとB級作品にならざるを得ない透明人間。まあラルフ・エリソン的なメタファーとしてのInvisibleというのはあるのかもしれないが・・・(未読です)。ともかく原点ともいうべき作品。そもそもがさすがにウェルズでもこんなものかというバカバカしさで、小さいスケールで乱暴者が狼藉を働くだけの小説。解説の作品が書かれた背景は興味深かったが。