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異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

『ブラウン神父の知恵』 G・K・チェスタトン

読書(ミステリー)

ブラウン神父の知恵 (ちくま文庫)

“「どこかおかしいんです。ここまで正反対にできているものは、喧嘩のしようがありません」―謎めいた二人の人物に隠された秘密をめぐる「イルシュ博士の決闘」。呪われた伝説を利用した巧妙な犯罪。「ペンドラゴン一族の滅亡」など、全12篇を収録。ブラウン神父が独特の人間洞察力と鋭い閃きで、逆説に満ちたこの世界の有り方を解き明かす新訳シリーズ第二弾。”(amazonの紹介より)

「グラス氏の不在」結婚したいと願っているカップルの男性に起こった事件。絵画的に印象的なシーンが謎解きで意味が反転するところが素晴らしい。
「盗賊の楽園」これまた盗賊のいる山道を行く一行という図式がガラリと変わるような一篇。イタリア的な事物がエキゾチックに描かれている気がする。
「イルシュ博士の決闘」これもオチは鮮やかなんだけどトリックとしてはかなりオーソドックス。
「通路の男」三角関係の中で起きた殺人事件の真相。ラストのブラウン神父の一言にチェスタトンの特徴が<逆説>にあるといわれるのがよくわかる。
「機械の誤り」チェスタトンは機械文明をどう思っていたのかなあ。機械の限界というこれまた一種の<逆説>的な要素が感じられるが、これはコンピュータの発達した現代こそこのテーマを発展させられるかもしれないな(いや既にあるのかもしれずこちらが不勉強なだけかもしれない)。
カエサルの首」父親の残したコレクションをめぐる騒動。これもガラリと図式が変わるようなパターンで面白いんだけど、動機が<逆説>的だね。アイロニカル、といい換えてもいいかもしれない。
「紫の鬘」これは少しライトな感じかな。政治的コメディ要素があるといってもいいかも。
「ペンドラゴン一族の興亡」伝説が題材になっていて冒険ファンタジー風味なのが非常に面白い。ミステリとファンタジーの関係する領域に属するようなユニークな小説。
「銅鑼の神」これは現在では間違いなくアウトな差別的小説。当時の人々の感覚がわかるところもあるが。
「クレイ大佐のサラダ」心理的な盲点をつくタイプのミステリがチェスタトンには多い気がするが、これは道具も生かされたある意味普通っぽい(?)ミステリ。
ジョン・ブルノワの奇妙な犯罪」お堅い学者と友人である派手な男の話。これもなかなか変なミステリだなあ。例によってアイロニカル。
「ブラウン神父の御伽話」とあるプロイセン小さな王国の謎に挑むブラウン神父。またまたアイロニカルなオチで。歴史劇の風味があるのもなかなか面白い。
 <逆説>的、アイロニカルなものばかりといった感じで、チェスタトンの特徴がそこにあるというのが非常によくわかる。ジーン・ウルフの理解になるかもと思いながら少しずつ読んできたが。、だんだんそのアイロニカルなところが自分のツボにはまってくるようになった。またこれは時代的なものかもしれないがロマンス的なものも重視される傾向があるようにも感じられる。あと古典ミステリというと探偵に相談をする人が現れてという形式が多い印象があるが、ブラウン神父は(少々不自然ではあるが)たまたまそこに居合わせて謎解きをするというパターンが多い。これについてはチェスタトンユニークなのか単なる形式上のことなのかミステリに詳しくない身としては今後考えていきたいところだ。