読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

トークショー柴田元幸さん×松浦弥太郎さん「パティ・スミス、フィリップ・グラス、そして“うたう”ビート詩人ギンズバーグへ」に行ってきた 

 いろいろ読書イベント好きの当ブログ主。今度はギンズバーグだ!とはいえ長年興味はあったもののビートニクについてはわからないことがずっと多くてねえ・・・。ようやく2014年のビートニク映画祭(自分のブログ)から身近なものに感じられた。で少しずつギンズバーグの本も読むようになったんだけど、なんと今年パティ・スミスがギンズバーグの朗読をする公演が日本にやってくる!これねえ、たった1日なのね。いつか忘れたけどかなり早い時期に知って、絶対逃さないようにチケット確保しましたよ。まあ実のところパティ・スミスも詳しくないのだけどニューヨークのシーンが感じられるようなイベントだなあという気もしたのでね(70~80年代のニューヨークには興味がある)。ただしかなり翻訳のサポートがありそうなイベントとはいえ英語の詩の朗読だし、一応ようつべに以前の同じコンセプトのイベントの動画はあって見たしギンズバーグ詩の新訳が載っている新潮6月号も買って読んだんだけど、なにぶんニワカなのでもうひと押しと思いイベントにも行ってきた。(以下毎度のことながら備忘録。※は当ブログ主による補足。間違いなどあったらご指摘いただければ幸いです)
 今回の公演で村上春樹氏と共に訳詞を手掛けた翻訳家の柴田元幸さんとビートジェネレーションに詳しいエッセイストの松浦弥太郎さんによるトーク。 http://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01qxtfy6m2kd.html 
 まずは柴田さんからギンズバーグについて。
・例えば小説でいえば英国なら「描写」で米国はそれに対して「声」だろう。どのように「声」を出すかに特徴があり、詩ではさらにそう。
・アメリカを代表する詩人の流れとしてホイットマンからギンズバーグという流れがある(※定型をとらない、息の長い文による、列挙法を使うというような形式上の共通点もあるらしい)。ホイットマンのSingingの時代からギンズバーグのhowl(痛みに叫ぶ)の時代へ。(この辺り新潮6月号にも柴田さんの解説がある)
・"HOWL"が出版された時代は息苦しい時代、画一化の時代。例えば戦争中男性がいないために男性の役割を女性が様々な分野で代行したため女性の社会進出が進んだが、戦争が終わり男性が戻ってきたために皮肉にも揺れ戻しで保守化した抑圧の時代。フィルムノワールの時代でもある。
・反対に『パパは何でも知っている』のよう過度に理想化されたホームドラマの時代でもあった。
ジェームズ・ディーンやプレスリーなど若者文化が勃興した時代でもある(映画『理由なき反抗』は気弱な父親が気に入らないので反抗するというような内容ではあったが)。「カウンターカルチャー」という言葉は1970年代に生まれたものだが、その源流の時代といえる。
 ギンズバーグの朗読、柴田さんの訳詞朗読も聞かせていただいた。朗読はほとんど初体験だが、読んでいるのとはまた別の体験になって楽しいなあ。
 後半は実際にギンズバーグにも何度もお会いしたという松浦弥太郎さんのお話。日本に居場所を得られないと思い18歳で渡米したという松浦さん。2歳ほど年下の世代にあたるブログ主にはその行動力の大きさが非常にダイレクトに伝わってくる。そんな松浦さんが感じたのは豊かであるはずの米国の<悲しみ>また米国が<挫折者の集まり>の国だということらしい。世界を動かす冨の力の一方で貧しい人々や影の部分がある国だということだろうか。非常に印象深い。
さてギンズバーグの話だが、これがどれもめちゃくちゃ面白い!松浦さんによるとギンズバーグ
・「純粋な少年のようなかわいらしさ」が年を取ってからもあった、「わいせつな言葉を使っていても汚い感じがない」ということだ。
・好きな人へのラブレターが詩になっているところがあり、嘘がない。
・TSエリオット、ウィリアム・ブレイクランボーの影響があった。
・ヨーロッパへの憧れがあった。
・(柴田さんのとの対話で出てきた話だが)ジャズエイジでジャズとの関連も強いが、ジャズのミュージシャンたちのようにドラッグで死んだりすることがなかったのは科学的に研究する面が強かったからではないか。

以下面白エピソードを羅列。
ギンズバーグはケルアックが大好きで何とか気を引こうとして詩を書いていた(ケルアックは天才で創作活動が活発で周囲の憧れの存在だったらしい)。ラブレターだが他のビートの連中(ニール・キャサディなど)とも肉体関係があった(笑)。
・ケルアックにはふられるがそのショックをランボーに向かうことで克服した。
・初対面の時にもイベントのスケジュールなども教えてくれる気さくな人だった。ペンを30本ぐらいポケットに入れていた(??)。ニューヨークにいるとどこかで会うようなイメージ。ただすぐに人を好きになり、色目を使うところがあって、(松浦さん自身も)家に来るよう誘われた。松浦さんは(ゲイではないので)そういうコミュニティの人達がいるところに興味本位で行くのはどうかと考え行かなかった。マイケル・カニンガムも口説かれたことがあるらしい。
・元々はミュージシャンになりたかった。ボブ・ディランの公演に同行した時、ディランに歌を教われば歌手になれるかと思っていたが、ディランに「君には無理だ」と言われて落ち込んだらしい。
・詩の書き方について。1.まずドラッグをやる→2.ラジオを聞く→3.詩ができる(※ほんまかいな)
・偉大な詩人は若くして亡くなり星になったといわれていて、「自分は長く生きちゃったから星になれないなあ(嘆息)」とこぼしていた。
・(当ブログ主が「ギンズバーグバロウズについて何か発言していたか」という質問をしたところ) 年上のバロウズを尊敬していた。バロウズは裕福な家の人で自由に暮らしていたことも憧れたところがあったようだ。ただあまりにもバロウズがドラッグにおいてエスカレートしていくのでしまいについていけなくなってしまう。(松浦さんは「そんな臆病なところもギンズバーグらしい」と)

 いやギンズバーグたしかにカワイイですね。詩は全くの初心者なのだが力強い詩を書く、面倒見のよいビートニクのオピニオンリーダー(たぶんアカデミックな場所に行ったビートニクの中ではまれなタイプではないか)というイメージがあった。だが実際には年下の寂しがり屋の幹事みたいな人だったのでは(<偏った理解)。親しみがわくなあ。

 さて最後に柴田さんから「フラワーチルドレンのWeには昔からどうも共感が出来なかったが、ギンズバーグのWeはすっと入っていける。ジャズとの関連が強いビートだが、実際にはその精神を直接受け継いだのはむしろ下の世代のボブ・ディランパティ・スミスなどロックのミュージシャン。村上春樹さんもつながっていてパティ・スミスとお互いに惹かれている。フィリップ・グラス仏教徒ギンズバーグとは仏教という共通項がある。日本で行われる今回の公演は非常にナチュラルな結びつきがある」ということだった。
 6月4日が楽しみである。