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異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

『ロデリック』刊行記念 柳下毅一郎さん×円城塔さんトークイベント@高円寺文禄堂

読書(海外SF) 読書関係イベント

 さる3月23日にスラデック『ロデリック』翻訳者の柳下毅一郎さんと解説を担当された円城塔さんのトークショーのまとめ。
 その昔、新高円寺に住んでいたので高円寺駅前もそれなりによく通ったが随分変わっていた(まあ20年近く前だから当然か)。文禄堂は駅前正面で、2階にも少し席があるちょっとユニークなイベントスペースで行われた。(例によって自己流備忘録。ところどころメモし損なって抜けてますし多少話の順番の入れ替えもあります。以下敬称略。※印はブログ主注。間違っているところがあったらご教示を)

柳下:スラデック『蒸気駆動の少年』出版記念トークショーがあった時に円城塔さんと伊藤計劃さんが二人揃って客席に座っていた。その時にもお土産短篇を用意した(※たぶんこれ、原題はAlien Territoryらしい。色んな順番で読めるいかにもスラデックらしい実験短篇。ということでその時当ブログ主は円城・伊藤両氏のちょうど後ろに座っていたのである。その時のまとめもあるよ)
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で、今回も用意した。アン・マキャフリーの料理に関するSFアンソロジー"Cooking out of This World"から。大学SF研時代に同人誌で訳しやすいのでこのアンソロジーから訳す人は多かった(※こんな感じ

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円城:その短篇(Alien Territory)どこでもらったのかと思ったらあの時だったのか!今謎が解けた(笑)。
柳下:スラデックは真顔で冗談をいうような人。
円城:本気なのかどうなのかという感じの人。
柳下:翻訳に足掛け30年。裁断してPDFにして訳したので長さがよくわからなかった。結果分厚くなってびっくり(笑)。
(訳すのは大変だったかの質問に)イギリス英語。英語自体に癖はない。言葉の意味はわかるが・・・というパターン。
円城:何だかよくわからない?
柳下:いったい何を目指しているのかよくわからない(笑)。
円城:暗号は情報がないと難しい。プログラムをつくって解読した。
柳下:たぶん綴り替えがあってというところまではわかるが、ネイティヴではないので難しい。
円城:誤植もあるような(笑)。
柳下:その辺りあまり厳密ではない作家という印象。ウルフなら意味があるんだけど、たぶんない(笑)。しかし絶対つながりがないと思われている部分にあったりする。
円城:賀陽親王(※P79に登場)とか何で気に入ったのか(笑)。
柳下:雑学の鬼。オカルト本を書いていたりしていろいろ調べている。本来はオカルト批判の本を作ろうと依頼されたマイケル・ムアコックが、面倒くさくてスラデックに振ったら、熱心に調査し過ぎてオカルト本を作ってしまった(※James Vogh名義の"Arachne Rising"だったと思う)。どこでやめたらいいかわからなくなるタイプでやり過ぎてしまう(笑)。
円城:小説がわかっていない人の書き方のような。たとえばウッドハウスなら考えている。
柳下:"Roderick at Random"(※『ロデリック』の続篇)では一応全部オチはついている(笑)。
円城:(『ロデリック』で)学校の話とか必要なのか。
柳下:(スラデックは)学校が好きなのかもしれない。組織の中でいろんな人が勝手に動き回っているような話、例えば学食での無意味な会話がその後につながっていくような話が好きなのでは。
円城:そういうのが好きなのはわかる。
柳下:本来つながるはずのものがつながっていなっくて、全然関係のないものや人がつながっていく話が好きそう。
円城:それだと(話が)終わらない(笑)。
柳下:シンパシーを感じる?(笑)
円城:シンパシーというか自分がやろうしていることは大抵スラデックがもうやっている(笑)。
柳下:(コンピュータが発達した)今の時代に生きていないのが残念。
円城:プログラムをしたり、Googleと組んだりして欲しかった。
柳下:もっとわからないものが出来ていた(笑)。水玉螢之丞さんに『ロデリック』を読んでほしかったな。『遊星からの昆虫軍X』(※原題"Bugs") を訳すときには映画の話ならよくわかるだろうと思って訳した。そういう意味で『ロデリック』はググらないとわからなかった。SFファンならわかるのかなあ。ロデリックが自分を知りたいためにロボットSFを読んだりするので。
円城:SFファンがロデリックとロボットSFの話をするけど伝わらない(笑)。今の人工知能研究に近い。ニューラルネットワークのような。ディープラーニングのロボットっぽい。ロボットだと思っているから何かを訴えているように見えるが、人間には理解できないというような・・・(※この辺詳しくないのでよくわかりません)。
柳下:(なんでも)文字通りに解釈してしまう。それしか出来ない。
円城:ロデリック=スラデックなのでは。
柳下:たしかに(スラデック作品は)自伝的。"Bugs"も。ロデリックの身寄りのない感じもそう。ロデリックがカソリックの学校で神の存在証明について神父と議論するシーンとかスラデックもそうだったのでは。
円城:周囲とすごく話が通じなかった人。
柳下:SF仲間とようやく話が合った。
円城:オカルトでもその論理に入ってコミュニケーションをとろうとするが、通じない。
柳下:いい人なんだけど怖いところもある。こういう形の私小説
円城:似たようなスタンスで小説も書いていたのかもしれない。
柳下:常にフレーム問題がある。スラデック自身フィクションと現実の区別がつかないというようなフレーム問題。
円城:やはりロデリックっぽい。
柳下:(円城塔の)『プロローグ』はロデリックが書いた?(笑)。
円城:それはヤバい(笑)。
柳下:とりあえず(文章を)暗号として読んでしまう。普通は誤植を疑う場合もそのまま言葉を考える。
円城:昔の自分の小説を読んでもよくわからなかったりする(笑)。スラデックもそうだったのでは。
柳下:『ロデリック』でどうしても一部わからないところがあった。(他の長篇について)"The Reproductive System"(※第一長篇)は普通な感じ。"Tik Tok"はブラックユーモアで爽快感ゼロ。
『ロデリック』はロデリックが可愛いし少しほっこり感がある。小ネタを楽しむ本。ウォーレン神父に同情。
円城:誰に共感するかでその人が診断出来るかも。(自分は)ロデリック寄りかな。誰もが自分が正しいと思っているが、そうかはわからないというような話。
柳下:マーはなんでも神話と結びついてしまような(考え方)の人。どんどん話が脱線していく感じが面白い。結末のないミステリ。
円城:追いつく目標。"Maps"(※2002年に出された未収録の作品集、なのかな。かなりぶっ飛んでるっぽい・・・)のような・・・。
柳下:思いつきを全部つい集めてしまうような。"Maps"にはゲームブックも入っている。出している人がスラデック的(※すみません聞き違いかもしれません)。
円城:暗号に誤植があって本当にわからなくなったりしているのがいい(笑)。「二銭銅貨」的なところもある。
柳下:ワンワンシンフォニーって何だよ!とか思ってると暗号につながっていったり。
円城:(ミステリとして)隠しものも変だし、鍵も変(笑)。普通はどちらかに理由があるんだけど。
柳下:マーの暗号はよくやったなあ、と。
円城:そこに力が入っている。普段からアナグラム好き。
柳下:ダブレット(二重語)好き。
("Tik-Tokが黒人のメタファーなのではという質問に対し)ロボットがサイコパスで良心がなく、自分の利益のためなら何でもやる。それは単に自分の生存のため。権力を求めるのはそれで安全になるからという話。ロボットはそんなことはしないと人間は決めつけているが。そういうものを書きたかっただけなのでは。
円城:スラデックの実感だったのかもしれない。なぜ嘘をついてはいけないかというような。なぜはない。
柳下:ロボットが人の言うことを聞かなければいけないのか。機械は人間ぽくないが、人間は機械っぽくなっていく。機能的になっていく。機械的な目的に向かって命令に従う。
終わりに『ロデリック』のネタの一部を公開。P124-125でカメラのマニュアルの下りがある。ここに出てくる「モシアン、ポカーソン、ライカニング」は英単語っぽく見える実在しない言葉をコンピュータが作ったもの。ここはギャグ。
円城:そういう人(笑)。フローチャートなんかも好き。
柳下:もう一つ、P323のバスケのチームのところは聖人のエピソードをもじったもの。
円城:『ロデリック』売れているらしいんですが、売れ方が変という(笑)。
柳下:『蒸気駆動の少年』もバーッと売れていきなりストップしたので心配。待ち構えていた人がワーッと買って・・・というパターン。是非『ロデリック』に売れてもらわないとこの面白い続きが出ない可能性が。ドラマっぽいところもあるんだけど。
円城:ロデリックをキムタクでドラマ化とか(笑)。
柳下:(円城さんの近作について) 大変面白かった。『エピローグ』無茶苦茶なSFの方が読みやすく、『プロローグ』純文学の方が難しいという。
円城:(『プロローグ』の評論で)プログラミングのところはスルーされてきている感じ(笑)。
柳下:『蒸気駆動の少年』の文庫化については短くすれば・・・といわれたが、けずる短篇がない。スラデックについては、たとえばラファティファンの場合秘密結社があってそれが頑張って出版につながっていて。まあそっちにも属しているんだけど(笑)。
円城:ラファティファンの結束が固い。
柳下:スラデックファンも是非結束を!