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異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

『特殊な本棚』柳下毅一郎、『ロデリック:(または若き機械の教育)』ジョン・スラデック

柳下毅一郎の特殊な本棚
ロデリック:(または若き機械の教育) (ストレンジ・フィクション)

エッセイと長年刊行が待たれていた大作が同時期に出て、ちょっとした柳下毅一郎祭りとなっている(多少時間が経ってしまったが(笑)
 
さて『特殊な本棚』。本の雑誌の連載で欠かさず読んでいた、一風変わった本を毎回紹介するエッセイ。柳下氏には翻訳家・映画評論家などさまざまな顔があるが、この連載は犯罪研究家(twitterではcrime buffと書かれている)としての面が強く出ていて、各地の犯罪記録だとか犯罪者による著書だとか被害者の著書だとか殺人ファンジン(!)といった本が基本的には多いのだが、その独特な切り口で人間の不可思議さを感じさせるエピソードが汲み取られていくところが本書の醍醐味である。さらにはけったいな「史上最低」の称号を持つミステリー作家スティーヴン・キーラーの紹介(なんと4回連続!)、異常に詳細な記録を誇るハイジャック本、どこがエロなのかさっぱりわからない北方艶征譚などなど分類不能な本が入り込むのが著者らしい。とにかく犯罪者を含め何かに取りつかれ「手段と目的がすり替わったような」(「完全網羅ハイジャック全史」の項)人々の姿が強く印象に残る。あと最後のアメリカの犯罪ノンフィクションの項はウルフ『ピース』なんとなく連想させる。


そして『ロデリック』。これまた「凄いが何でこんなことに情熱を傾けるのかよくわからない」(オカルト批判本を書くように依頼を受けて、いろいろ研究した挙句オカルト本を書いてしまったことが知られている)作品を残してきたジョン・スラデックの伝説的ロボットSFである。とある大学でひょんなことから生まれたロボットが数奇な運命をたどるスラプスティックコメディである。ブラックジョークが飛び交うが基本的には登場人物の思惑や会話がすれ違っていく感じが楽しくそれなりに大部だが読みやすい。それにしても暗号の部分とかコンピュータが発達していない時代にどうやって作ったのか驚愕である。とにかく才人であることは間違いない。通常のSFは架空の理論によって世界が構築されることに力点が置かれるが、スラデックは論理体系そのものに強く惹かれる珍しいタイプのように思われる(だからミステリや論理で動くロボットの小説が資質に合った)。その結果本書のようなあれこれねじくれて理屈や物事がつながった奇天烈な小説が出来上がった。解説にもあるように本作ではロデリックは最後にようやく世の中に出るところで、本当の冒険は続篇の〝Roderick at Random"で繰り広げられる。『ロデリック』が売れないと続篇が出ないそうだ。皆さまご協力を!