異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

『ぶるうらんど 横尾忠則幻想小説集』 横尾忠則

ぶるうらんど - 横尾忠則幻想小説集 (中公文庫)

“生と死のあいだ、此岸と彼岸をただよう永遠の愛の物語(短編連作『ぶるうらんど』第36回泉鏡花文学賞受賞作)に、異国(スペイン、アマゾン、カシミール)を旅する極彩色の幻想奇譚集『ポルト・リガトの館』をあわせて傑作幻想小説集。”(amazonの紹介より)

 美術家横尾忠則はエッセイなども多く発表していて文筆家としての力量も高いのは知っていたが、小説となるとさてどうだろうという疑問を持って読み始めた。しかしその内容は余技という域を超え、なかなか面白かった。表題作は泉鏡花文学賞受賞というのだから当然といえば当然か。
 まあ時折昔の中間小説を思わせるようなちょっとピンとこない視点や描写がのぞいたりするところはあるが、死後の世界にダリにサンタナにインドといった題材が登場する一方で主人公の考え方などで「(前略)ダリ本人に興味はあるが、作品はもうひとつ好きになれなかった。確かに空想力と技術は天才的だが、作品に描かれた秘密や謎が全て説明されているところが、どうも理屈っぽく感じてしまうのである。(後略)」とか「(前略)流行りのスピリチュアリズムてのは俺ダメなんだよ。(後略)」といった文章が出てきたりするのが興味深い。それもどうしても美術家としての部分を意識して読んでしまうことにはなってしまうのだが。とりあえず「ポルト・リガトの館」は荒巻義雄「柔らかい時計」と並ぶダリ幻想小説で興味のある方は御一読を。