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異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

『ウィスキー&ジョーキンズ:ダンセイニの幻想法螺話』ロード・ダンセイニ

ウィスキー&ジョーキンズ: ダンセイニの幻想法螺話
“ダンセイニの人気シリーズ、待望の邦訳。初老の紳士ジョーキンズがウィスキーを片手に、実話と称して語り出す若かりし日の思い出。香り豊かで軽やかなテイスト、心地よい後味にほろ酔い気分。どこから読んでも楽しめる愉快な短篇23作。”(amazon紹介より)

 現代ファンタジーの祖として知られる大家だが当ブログ主はまだちょっとしか読んでおらずどこから手をつけたらいいのかなーと考えていたが、うってつけの作品集が出た。どんなお題でも嘘か真かわからない人を惹きつけてやまない話を繰り出すジョーキンズはビリヤード倶楽部(なぜかビリヤード台なし!)の人気者。酒を片手に今日も倶楽部のメンバーはジョーキンズの話に耳を傾ける。
 というわけでファンタジー初心者にも親しみやすい会話形式をベースにした短いホラ話。装丁も洒脱で現代的。しかも内容は結構濃厚なのだよ。(以下面白かったものを中心に)

「アブ・ラヒーブの話」 謎の生物アブ・ラヒーブ。この生き物が写真のように一瞬が浮かび上がる描写が見事だなあ。
「薄暗い部屋で」 次第に迫りくる恐怖。鮮やかな幕。
「象の狙撃」 象ものは元々好物なのだが、オチがいい。
「失われた恋」 後の「奇妙な島」と共に島の謎めいた美女というのはお気に入りのモチーフなのかな。
「流れよ涙」 ダンセイニは音楽の描写もあふれ出るようで凄い。
「ジョーキンズの忍耐」 ユニコーンもの。幻獣ものはどれもいいなあ。
「リンガムへの道」 コラムにもあるように文明批判的な要素がありリドルストーリーとはちょっと違う不思議な余韻を醸し出す作品でもあり後を引く。
「ライアンは如何にしてロシアから脱出したか」 何となく『宇宙飛行士オモン・ラー』を思わせるジョーキンズ版奇想科学小説。いやあこんなのまであるとは。
「オジマンディアス」 晩餐会のエチケットの話から本格ミステリになる驚き。
スフィンクスの秘密」 短いんだけどパァっと世界が広がっていくところがあって印象的。
「ジョーキンズ、馬を走らせる」 80年代に都市論が流行っていて10代でよく分かりもせず雰囲気だけにかぶれて、その余韻か未だに都市萌え小説(「美少年」『破局』の項)に反応するんだけど、まさしく百花繚乱色とりどりの美しい花が咲き乱れる幻影の都市に陶然。ベストはこれ。
「スルタンと猿とバナナ」 いつもジョーキンズにいいところを取られるんで倶楽部のメンバーもちょっとひとひねり。洒落が効いてる。
ナポリタンアイス」 こうきたか(笑)
「ジョーキンズ、予言者に訊く」 予言と決定論みたいなものは未だにSFなどの重要なテーマだったりする。かなり早いセンスでは。
「夢の響き」 夢のような本書も美しい余韻を残す本作で終了。収録順も用意周到でお見事。

 訳者中野善夫さんが楽しんで訳しているのが分かる本である。コラム、あとがきも充実していてダンセイニの個性が非常に分かりやすく紹介され初心者には本当にうれしい。SFファンとしてはダンセイニに影響を受けたというクラークとの関連も今後追っていこうかなあなどと考えている。 

※追記 1/24までに読了して好きな作品を投稿するともしかしたら豆本が当たるかもしれない。まだ間に合うよ!