異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

『スーパーマン:レッド・サン』マーク・ミラー(作) デイブ・ジョンソン/キリアン・ブランケット(画) 高木亮(訳)

スーパーマン:レッド・サン (ShoPro Books)

“彼は別世界から来た驚異の男。河の流れを作り変え、素手で鋼鉄を曲げる英雄。平凡な労働者の代表として、スターリン社会主義、そしてワルシャワ条約の拡大のために、終わりなき戦いを続けていた。時は冷戦時代。敵対国アメリカに立ち向かうのは、ソ連のスーパーヒーロー、スーパーマンだった…。エルスワールドを描いた本書では、『キック・アス』のマーク・ミラーの手によって、誰もが知っている“スーパーマン”の話が大胆に改変された。そう、地球に墜落した宇宙船はアメリカではなく、ソ連の集団農場に墜落したのだ。スーパーマンのコミック・シリーズのなかでも異色作かつ傑作として評される『スーパーマン:レッド・サン』。脚本の完成度が高く、あらゆるコミック・ファンに推薦できる一冊である。また巻末にはアートを担当としたデイブ・ジョンソンとキリアン・プランケットのラフスケッチも収録。”

 まずスーパーマンの胸のSが共産主義の「鎌と槌」マークになっている表紙絵が見事で(元々フィクションであるスーパーマンでありながら)<ソ連側のヒーローとなった架空の歴史のスーパーマン>といった趣向が一目でわかり惹きつけられる。全体として驚かされたのはスーパーマン的な行動原理が共産主義と親和性が高いことである。そして序文にもあるようにスーパーマンの国を入れ替える表面的な面白さだけに止まらず社会変革の様子まで描かれ、正義の人であるスーパーマンの持つ両義性が東西両陣営でも変わらず、結果的に人間社会の根底に潜む問題がクローズアップされていく。ストーリーの完成度も高く、ラストにも膝を打った。DCコミックスのスターキャラクターも随所にからんでいるのも楽しい傑作である。