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異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

『ナイト』Ⅰ・Ⅱ ジーン・ウルフ

読書(ホラー/ファンタジー)

ナイト I (ウィザード・ナイト)
ナイト II (ウィザード・ナイト)

<ふと気づくと少年がいたのは異世界ミスガルスルだった。「あれらは裏切りと崇拝の物語とともにおまえをよこした…」不思議な謎を託された少年はエイブルと名を授けられ、妖精の女王ディシーリと出会い、魔剣エテルネを手に入れる使命が課される。中身は子供のまま体だけ大人の男となり、真の騎士となるための旅に出た少年を待ち受けるのは海賊、ドラゴン、巨人族の群れ。愛と名誉をかけた戦いの日々、そして剣と魔法にみちた冒険の日々がいま始まる…“新しい太陽の書”シリーズでSFファンタジーに新しい風を吹き込んだ巨匠ウルフがふたたび精魂をかたむけて送るファンタジー大作“ウィザード・ナイト”全4巻、刊行開始!>(Amazon『ナイトⅠ』の紹介より。

 Ⅱの中野善夫さんの解説で伝統的な<騎士物語>をメタフィクショナルに再構築であることが解き明かされてぼんやり読んでいる読者としてはほわーなるほどと目からウロコぼろぼろ状態になるわけだが、とにかくちょっとそこのアナタこれは見逃せない傑作ですよ是非ひとつどうぞ。損はいたしません。
 ティーンエイジャーの少年が兄に向けての手記という枠物語になっているが、これまで紹介されてきたウルフ長篇の主人公達とはひと味違ってこのエイブル基本的に陽性なキャラクターで、一途にディシーリを思い騎士になるんだ!というシンプルな動機で突き進むのでリーダビリティが非常に高い。そこに弟分やら美しい姫に、何といっても頼もしい友である犬にいたずら好きな猫や下部を名乗りつつ初な主人公をからかいながらつきまとう女エルフたちなどなど旅の仲間が加わるのだから楽しくならないわけがない。当時齢70を越えたウルフの心憎いばかりの自在な筆致は余裕たっぷりなのに瑞々しさをたたえ、堂々たる王道ファンタジーに仕上げられている。しかも上記のように重層的な仕掛けが施されているというのだ。これを円熟の極みといわずしてなんといおうか。
 全4巻なので後半『ウィザード』の2巻が12月末に待ち構えていて期待に胸が膨らむが、(解説に出てくる)作品の深い部分を思うと騎士物語関係本も読みたくなりどんどん課題本が増えていく悩ましさ。ウルフは導き上手な先生だなあ(笑)。