ある意味ディックのマイナー作品の代名詞として有名な作品である。つまりマイナー作品なのに有名という変なポジションを獲得した一作でもある。で、結局これが最後の未訳作品だった(一部雑誌で訳されたり、アマチュア出版で出たりはあったようだ)。
核戦争の終結で荒廃した世界で、人類はその統治を統轄弁務官ディルの管理する巨大コンピュータ<ヴァルカン3号>に委ねていた。機械による支配に反発する宗教団体<癒しの道>指導者フィールズ師は反旗をひるがえし・・・。
意外と面白いじゃん。1960年とディックとしてはまだ多くの傑作をものにする前の時代の作品で、後の強迫観念に満ちた凄味には欠けていて機械対人間といった割と単純な図式におさまるようなストーリーになってて登場人物もかなり類型的だが、シンプルで分かりやすいともいえるし、機械への恐怖感とガジェットのオモチャ感、宗教が題材になっているところなどところどころにディックらしさが現れている。ディックはマイナー作品も楽しいね。