異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

映画『インヒアレント・ヴァイス』観た

 先日読了した『LAヴァイス』の映画化作品。
 『LAヴァイス』の解説を読むとピンチョンの小説は、舞台である時代の事物を微細に執拗に取り込んでいきストーリー・構造共にパラノイアックであるのが特徴で、独特の文体に架空の曲の歌詞まで入ってくるから映画化はかなり違ったものになるだろうとは予想していた。
 (以下内容に触れます)
 結果、大筋は原作を追っているがやはり原作とは違うものだろう(当然ながら)。軸となるシャスタとの話も多少異なるし、映画の方では原作にあったような非日常的な世界の影もあまり見えない。また原作にあった架空の歌詞も出ていなかった気がする。音楽は時代に忠実だった気がするが、原作でポイントとなった曲もかかっていなかったような気がする(一度しか観ていないので自信はあまりない)。もっと時代のニュースや小道具を目立つように取り込んでくるかと思ったが、それも意外と少なかった気がする(ただ車だとか街の様子だとか画面に出てくる物などには同時代に詳しい人には分かりやすく出てきているのかもしれない。TVドラマが出てくるシーンもあったしね)。
全体の印象としては原作でのパラノイア的な異様さが後退し、感傷的な部分が前面に現れていた。熱狂の1960年代が終焉を迎え、これといった善でも悪でもない登場人物たちは甘やかな倦怠につつまれやるせない日々を緩慢に過ごしている。そんな感傷に流れがちな空気感が妙に後を引く作品だ。
 ポール・トーマス・アンダーソン監督は西海岸出身なのだな。これは監督の生まれた年を舞台にした作品であり、特別な思いはあるかもしれないが一方で直接は記憶がない時代を扱っているともいえる。そういった意味でこの時代から10年ほど経った同じ西海岸を舞台にした『ブギーナイツ』を観直したくなる。その80年代には異常な好景気という60年代とはまた別の狂乱がが待ち受けているのだ。