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異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

映画『神々のたそがれ』観た

「舞台は、とある惑星の都市アルカナル。地球から800年ほど遅れ、中世ルネッサンス期を迎えているかのようなこの地に、地球から科学者・歴史家らの調査団が派遣された。しかし彼らが目にしたのは、権力を持った商人たちによる圧政、殺戮、知的財産の抹殺であり、20年が経過しても文化発展の兆しは全く見られない。地球人の1人、ドン・ルマータは、知識と力を持って現れた神のごとき存在として惑星の人々から崇められていた。だが、政治に介入することは許されず、ただただ権力者たちによって繰り広げられる蛮行を傍観するのみであった…。」
ユーロスペースの紹介文より)


 原作はストルガツキー兄弟の『神様はつらい』(未読)。アレクセイ・ゲルマン監督の作品も初見、ほとんど予備知識無く観た。作品の公式HPに錚々たる顔ぶれによる賛辞が並ぶが、たしかにこれは恐るべき作品だ。
 基本的な筋立ては上記の通り。地球人から見た停滞した惑星の様子が淡々と綴られていく。しかし観客は傍観者たることが出来ない。許されない。観たこともないような人々の近接描写で、繰り返し登場するのは雨の続く惑星の泥まみれ糞尿まみれの不潔な日常。その世界では権力者による弱者への冷酷な支配が日常化し、未来への希望の見られない極端な閉塞感に満ち満ちている。そうした世界に観る者は否が応にも閉じ込められ、その独特なアップを多用した画面により逃れることが出来ない。蹂躙される人々に夥しい人間の死、非人間的な権力機構といったものを描写するのにこうした手法があったことにも驚かされる。あまりに強烈な映像体験だけに(3時間近い長さもあって)終了後軽くめまいを覚えるほどだった。白黒ながらかなり胸が悪くなるシーンもあり、誰にでも薦められるわけではないが、人間の根底に潜むどろりとした原形質の部分を生で取りだしたような稀有な作品として時代を超えて語られるに違いない。