読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

『チャーリー・モルデカイ1 英国紳士の名画大作戦』 キリル・ボンフィリオリ

チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦 (角川文庫)

30年も前に存在していた文庫のまさかの解説本『サンリオSF文庫総解説』が登場して驚かされたが、それからほどなくして飛び込んできたのがこのモルデカイシリーズの刊行のニュースだった(ジョニー・デップの映画化の話はその一年前に知っていた。ちなみにtwilogは便利ですね)そのサンリオSF文庫で刊行された『深き森は悪魔のにおい』はこのモルデカイシリーズの3に当たる様だが、ジャージー島を舞台にした連続レイプ事件の話で背表紙の紹介がふるっていた。

 「まったくもって吐き気のする強姦事件だった。犯人はやけに凶暴で、ゴムのマスクに、山羊のようにいやな臭い、腹に剣の絵がある。事が済むと相手の股ぐらにがまを置いていく。やはりゴムのマスクに変な臭い、子供をさらっておかしなことをすると、そこジャージー島の伝説にある、けもの男か?あるいは(後略)」

 (全文はこちら。翻訳ミステリシンジケートのホームページから)

 ね、かなりキテルでしょ。しかも名前がキリル・ボンフィリオリとかなり変わった響き。さらに巻頭言がふるっていて一部を御紹介すると
 
 「この小説に登場する人物で、実在の人物に故意に似せたものは一人もいない。実在の人物のほうがはるかに信じがたい人物であるから、小説には使えない。
 (中略)
 語り手として登場する架空の人物はいやらしい毒気を含んだ人物である。どうか著者と混同しないでいただきたい。著者は優雅で、親切な人物なのである。
 (後略)」

 などと書かれている。これだけで作者がかなりの曲者と分かる。結局読んだのは2000年以降だったが変態性と定石破りの展開で期待に違わぬ面白さだった。ただまあやはり曲者だけあって、またその作品数の少なさと1985年に亡くなっていることもあり、その後紹介は進まず、かなりマイナーな存在となっていた。それが現在公開中のジョニー・デップ主演の映画のおかげで突如刊行となったわけだが、どうやら脚本家のエリック・アロンソンが英国でモルデカイのシリーズを知りハリウッドであらゆる関係者に脚本を見せジョニーデップが気に入ったということらしい。エリック・アロンソンとジョニー・デップのおかげだなあ。

 さて本作は副題通り名画盗難をめぐる話。チャーリー・モルデカイは旧友でイギリスの警視であるマートランドからマドリードで盗まれたゴヤの絵画の手掛かりについて訪問を受ける。主人公のチャーリーは貴族の息子で美術商を営む。美食家で下ネタが好きでちょいとばかし変態趣味のある人物だが、裏社会に通じ怪力の執事ジョックを従えるなかなか食えない男でもある。そこにアメリカの石油王クランプフやその妻が絡んで、チャーリーは命を狙われるわアメリカに渡るわとんだ大冒険かはたまた珍道中がオフビートに繰り広げられる。
 というあらすじは意味がある様な無い様な・・・。実はこうしたドタバタの間に登場人物はどんどん死ぬ陰惨さも全体に及んでいるし夥しい蘊蓄(当ブログ主などほとんど知らない作家などの引用ばかり)が挿入されるなど明るいんだか暗いんだか浅いんだか深いんだかさっぱり分からない混然一体となった感じがこの作家の持ち味だからである。
 読む人を選ぶ作品だと思うが、読了すると何だかもう一度頁をめくりたくなる癖のあるチーズの様な風味がある。

※追記 そうそう54ページのところで「川船ギャンブラー風の収まりの悪い金メッキの」という表現が出てきて、この「川船ギャンブラーについて」カッコつきで(ミシシッピ川などをいく蒸気船の賭博場で日々の糧を得た賭博師)と注釈が入っていた。これはたぶんカルチャークラブの曲“カーマは気まぐれ”に出てきたキャラクターだな。

Culture Club - Karma Chameleon - YouTube

カルチャークラブは今思うと結構レトロ趣味なんだなあ。