異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

『売女の人殺し』 ロベルト・ボラーニョ

売女の人殺し (ボラーニョ・コレクション)

 久々のバーチャル世界旅行(まだ一応あきらめてないシリーズ(笑)
 チリ生まれでクーデターに遭遇するなどメキシコやヨーロッパを放浪した作家。今回初読。特に面白かったものに○。
「目玉のシルバ」○ 中南米からヨーロッパを転々とする主人公は同じく転々としている旧友シルバと偶然再会する。残酷な世界の現実がふいに目の前に表出する怖ろしい話。
「ゴメス・パラシオ」 仕事で出会ったメキシコの国立芸術院の女性所長との交流。さりげないが後を引く。
「この世で最後の夕暮れ」○ 語り手<B>と元ボクシング王者の父親のエピソード。実際作者の父はボクシング王者だったらしい。
「一九七八年の日々」○ 語り手<B>とヨーロッパ在住の亡命チリ人たちの一筋縄ではいかない心理が描かれる。胸に重い物が残る。
「フランス、ベルギー放浪」 <B>は女ともだちのいるブリュッセルに向かう。女ともだちは<B>に対し受容的な態度といえそうなのだが、訪ねて行った癖に建設的な関係を築けず彼女を意識しながら娼婦を買ったりしている所がなんとも(笑)
「ラロ・クーラの予見」○ 母乳と妊婦フェチのポルノ映画のスター女優であった母親の相手役だった男を訪ねる主人公。とんでもない話だなー。映画「ブギーナイツ」を思わせ、珍妙な滑稽さと対極の死の影や侘しさが漂う。
「売女の人殺し」 TVで見た男に一目ぼれしたストーカー女が掴まえてバイクで連れ去る。交互に語り手が変わる実験的な要素のある作品。
「帰還」○ 死んでしまった主人公が目にしたものは。これまた侘しさが味わい深い。
「プーバ」○ どん底のバルセロナに加入したのは無名のアフリカ人MF。かなり独特なボラーニョ作品だがこれはとっつきやすい面白さがあるのでは。
「歯医者」○ 旧友の歯医者が患者を死なせパニックになっているところを慰めに行く主人公。何だがいつの間にか芸術や文学の話になるという不思議で幻想的な描写が美しい一篇。
「写真」 フランス語圏の詩人の名が次から次へと現れその写真への印象や妄想が広がっていくところがユニーク。
「ダンスカード」 詩人ネルーダに対する思いが断章形式というか詩の様に短い文章で表わされるこれまた実験的な作品。
「エンリケ・リンとの邂逅」 これまた文学者についての小説だが、文通をしていたものの実際に会うことは無かったという詩人エンリケ・リンに夢で会う話で、もちろんあくまでも非日常の世界である。

 クーデターを経験し亡命チリ人たちと国外で交流したという大きな体験や元ボクサーだった父親を持っていたり自伝的な小説も多いが、芸術や詩そして創作する人々についても重要なテーマであり、またいかに表現するかという実験的な手法への関心の高さもあり、さらには幻想的非日常的な描写も好んで取り入れられるなど多面的な作家であり、実際本書でも作品はかなりバラエティに富んでいる。解説では<死者><見ること>といったボラーニョの特徴が挙げられ大いに参考になったが、他に<意識下の世界>が広がり現実を浸食していく様なところも個人的には感じられた(「歯医者」などの風景描写などに)。
 しかし何より詩人でもあるボラーニョの言葉は鋭く読む者に切り込んでくる感じがあり、描写が鮮烈で視覚的イメージが強く印象づけられる。それが大きな魅力である。
 

 さてさて小説と関係ないチリ情報。チリの音楽でもいきますか。詳しくないのでまずはウィキを見ちゃう。
チリ - Wikipedia

 クエッカという伝統音楽がボリビアやアルゼンチンと共にあるらしい。こんな感じ。

 

Campeones de cueca chile - YouTube


 で「1960年代後半からは政治と強く結びついたフォルクローレヌエバ・カンシオンが流行した」という記載もあるね。ヌエバ・カンシオン。チリだけではない、社会運動を象徴する音楽の様だ。ピノチェトの軍事政権下では弾圧され、歌手のビクトル・ハラは処刑された。そのビクトル・ハラ


Victor Jara - Te Recuerdo Amanda - YouTube

 ついついググってしまう。メタル関連。南米もたしかメタルが盛んなんだよな。

NECROSIS - Hidden Enemy - YouTube

 ヒップホップもフランスとチリの混血Ana Tijoux。なかなかユニーク。

Ana Tijoux - Somos Sur (Feat. Shadia Mansour ...

 スポーツはなんといってもサッカーの様だねえ。