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異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

第26回SFマガジン読者賞に投票

読書(海外SF) 読書(SFマガジン) 読書(日本SF)

 第26回SFマガジン読者賞投票した。
 来年からSFマガジン隔月になるということで、ちょっと今回は区切りとしてなるべく読み切り作品を読んで投票してみることにした(もちろん誰に頼まれた訳でもないが(笑) なにはともあれ期限が近付いたのでとりあえず投函。気づいていない読み残し作品もあるかもしれないが、連載とPSYCHO-PASSもの以外の読み切りはたぶん読んだんじゃないかなあ(あったら教えて下さいまし)。
 あと海外作品・日本作品のベスト5投票も一応した。

では読み切り作品の雑感から。


◎海外作品

2月号
「かわいい子」 オースン・スコット・カード
カードもあんまり読んでいないのだが、上手いのは間違いないよね。ただこの作品はシリーズものだけに単独としてはまあ。
「ウィンター・ツリーを登る汽車」 アイリーン・ガン&マイクル・スワンウィック
 今の季節に相応しいクリスマスネタのダーク・ファンタジー。冒頭の不穏な描写から始まり非常によく出来ているんだけどなあ。基本的に優れた作家であるのは分かるんだが、どうもスワンウィックって肌が合わないんだよな(共作であるのは承知の上で)。

3月号
「スシになろうとした女」 パット・キャディガン
 木星を舞台にした旧人類と手術により特殊能力を身につけたスシという新人類の軋轢が描かれる。なぜスシ?出来は普通かな。
「没入」 アリエット・ドボダール
 没入装置によって人物の真の姿が隠されてしまう世界。ベトナム系フランス人らしい。これも普通。
「九万頭の馬」 ショーン・マクマレン
 第二次大戦時の英国、ある科学者の元に政府の担当者が極秘に入手したナチスドイツのロケット開発の情報について尋ねに来る。スチームパンク風味のスパイ活劇。テンポのよいエンタテインメントでこれは面白かった。

4月号
「否定」 クリストファー・プリースト
 <夢幻諸島>シリーズのファイアランドに配属された国境警備隊の初年兵の話。サンリオSF文庫『アンティシペイション』収録の「拒絶」(安田均訳)を、シリーズの翻訳を手掛けている古沢嘉通さんが新訳。話としての派手さはないが、作家と読者の関係が本読みの胸を打つ。名作でしょう。初訳ではないがやっぱりSFマガジン読者賞の海外部門に。
「ウナティ、毛玉の怪物と闘う」 ローレン・ビュークス
 怪獣が渋谷を暴れ回り戦隊美少女が闘う、カワイイクールジャパン冗談SF。いろんな日本ネタが登場するいかにも最近らしい作品だが村上隆のことをどう思っているのかちょっと気になる(笑)

5月号
「パッチワーク」 ロラン・ジュヌフォール
 『オマル』のスピンオフでミステリ風味の作品。結構面白いが単独作としてはまあ普通。
「鼠年」 スタンリー・チェン
 遺伝子技術で巨大化した鼠を退治する駆除隊の話。ちょっとバチガルピを思わせる暗い近未来もので結構好き。
「異星の言葉による省察」 ヴァンダナ・シン
 エイリアンの要塞にある機械が主人公の運命を変えてしまった。内容と断章形式のスタイルにどうもズレを感じ、ピンとこなかった。

6月号
「釘がないので」 メアリ・ロビネット・コワル
 世代宇船の記憶を担うAIに異常が。ヒューゴー賞受賞作なのか。うーむウェット過ぎてちょっと。
7月号
「端役」グレッグ・イーガン
 洞穴の中で目覚めた主人公は重力が東向きに働く世界で、その謎を解いていく。「白熱光」を思わせる設定、他作品に共通する要素を感じつつも、一読ではちょっとよく理解できなかった。少しだけ印象をいうとすると近作では従来の作品にはなかったそこはかとない余裕やあからさまではないものの軽いユーモアの要素も加わっているかなあという気がした。

10月号 特集いまこそ、PKD
 ディック特集。とはいえディックの短篇は採録シノプシス(みたいなもの)だけ。
「地図にない町」 実は初読。普通。
ハーラン・エリスン『危険なヴィジョン』向きの、すべての物語の終わりとなる物語」 よくこんなものを発掘したなあ。

11月号

12月号

◎日本作品
(PSYCHO-PASSものはアニメを観ていないのと時間が無かったこともあり読めませんでした)

1月号
「みずは無間」(第1部)六冬和生
読了済み→『みずは無間』 六冬和生 - 異色もん。
「オニキス」下永聖高
 ハヤカワSFコンテスト最終候補作。時を超える粒子の発見で少しずつ日常が改変される世界。二度と帰らない過去をテーマにした時間SFは王道だが新鮮なアイディアで非常に完成度が高い。ただまとまっている分、やや大賞としては弱く「みずは無間」に軍配が上がったのはまあ妥当かな。
「岐路 星界の断章森岡浩之 このシリーズも1巻しか読んでないんだよな・・・。造語のこだわりとか面白そうなんだけど。本作の様な新しい家族制度とかテーマも興味をそそられるし。
2月号日本作家特集
「ナスターシャの遍歴」扇智史 
 旧友のナスターシャに再会して。ナスターシャの語る奇妙な話から日常が崩れていくという流れが滑らかで面白かった。
「亡霊と天使のビート」オキシタケヒコ 
 音響の解析で依頼人の事件を解決するシリーズらしい。音に関する情報が濃くて楽しめた。このパターンはドラマ化いけるんんじゃないの。
「自撮者」松永天馬 
 デフォルメされた未来のアイドルカルチャー。基本アイドル文化にあまり親しんだ経験がないので、デフォルメされている部分もピンとこなくてね・・・。これはまあ相性の問題でしょう。
「カケルの世界」森田季節 上下段2段組で描かれる学園物やゲーム物を取り入れたかなりテクニカルな作品。一読ではいまいち全体像がつかめていないが、凝っているのは間違いない。
3月号
「廿日鼢と人間」深堀骨
 唯一無二の奇想と独特の文体が澱みなく流れそれが不思議なグルーヴを醸し出す。堂々のSFでもあり驚愕。本田博太郎のことはよく知らないんだけどさ(笑)
4月号
「環刑錮」酉島伝法 
 父殺しに対するむごい刑。作者らしいグロテスクなユーモアが強烈。
「スピアボーイ」草上仁 
 空飛ぶ魚みたいな生物スピアの疾走感が楽しい。
5月号
「廃り」(すたり) 小田雅久仁
 社会の片隅に生きる灰色の人々<廃り>がいる世界。「長城」と同じ様に現代社会とちょっとだけ違う部分のある世界を描いて日常に異化作用を起こさせる。静謐で自然な和風味が面白い。これを読者賞の1位にする。
6月号
 ちなみにこの号はジュヴナイル特集なんだけど、ヤングアダルトやライトノべルと若い読者向け作品(実際読んでいるのはもっと年長者も珍しくないだろうが)の呼称がいろいろ増えた中であえてジュヴナイルという懐かしい言葉を持ってきたのは、昔から綿綿と連なる系統の作品を拾い上げていこうということかな。
タンポポの宇宙船」藤崎慎吾
 冴えない中学生の元にやってきたちっちゃな宇宙人。見慣れたフォーマットにハードなアイディアをさりげなく織り込んでくるねえ。さすが。
「たとえ世界が変わっても」片理誠
 裕福ではない家に生まれた主人公の誕生日プレゼントは古い型のロボットだった。手堅い出来だが、こういうジュヴナイル系の作品はフォーマットが決まっていて作家修業にぴったりという話が昔からあり、フォーマットが決まっている分読者としては初めて読む作家の個性は掴みにくい面もあると感じた。
7月号
「サラゴッサ・マーケット」谷甲州
 新・航空宇宙軍史シリーズ。今回は軍事ミステリー的なパターン。
9月号
「θ11番ホームの妖精」籐真千歳
 未来の駅の美少女駅員のシリーズかあ。なるほど。まあまあかな。
10月号
「ジュピター・サーカス」谷甲州
 木星表面に接近する謎の未登録船を追う特設監視船。新・航空宇宙軍史シリーズ。安定した筆致。
「サイレンの呪文」オキシタケヒコ
 武佐音研シリーズ。今回は所長の佐藤裕一郎が研究室で侵入者に襲われてしまう。音に関するアイディアが今回も素晴らしいが、これ話としてまだ終わっていないのかな。続きはあるの?

というわけで
・海外部門 「否定」クリストファー・プリースト 
・国内部門 「廃り」小田雅久仁
イラストレータ部門 塩澤文彦 ←祝ラファティ生誕100年

次にベスト5アンケート。これは2014年度SFベストということになるのだが、2013年11月~2014年10月までの出版作品になる。今回は特に量を読めていなくてね・・・。ムリクリのベスト4、5(苦笑)
・海外作品
1.『ピース』 ジーン・ウルフ 
 20世紀初頭アメリカの風景が幻想的に立ち上がる。訳も素晴らしく夢の様な一冊。
2.『白熱光』 グレッグ・イーガン
 上記の様に近年のイーガンには少し明るさが見られる気がする。アイディアの方はいまだによく理解できていないが、伝統的なSFの面白さもあり、ある意味親しみやすいとも言える。
3.『オマル』 ロラン・ジュヌフォール
 フランスの文化人類学的SF。まだ続篇は読んでいないんだよな。
4.『全滅領域』 ジェフ・ヴァンダミア
 まだ読み途中だが(笑)これ面白い。不条理な現象が起こる謎の領域。ニューウェーヴ好きにはたまんないね。続きが良かったらシリーズ全体としてまた投票するかも(笑)

・日本作品
1.『新生』 瀬名秀明
 瀬名秀明前進力に脱帽。
2.『リテラリ―ゴシック・イン・ジャパン』高原英理
 感想を書きそびれてしまったが、これは素晴らしいアンソロジー。旧作中心なので<新作>と表記のあるアンケートにはにふさわしくないかもしれないが、北原白秋から現代作家まで<ゴシック>というキイワードで文学史を読み直す試みで大変示唆に富んでいた。編者の熱意は序文や解説に加えて本の厚さからもびんびん伝わってくる!
3.『向井豊昭傑作集 飛ぶくしゃみ』岡和田晃編
 こちらも編者の情熱が伝わってくる一冊。いわゆる幻想系は「ヤパーペジ チセパーペコペ イタヤバイ」「飛ぶくしゃみ」あたりで、異様な文体が凄い。
4.『ルーティーン』篠田節子
 アンソロジーが並んでしまうが、完成度が高く面白かった。
5.『みずは無間』 六冬和生
 完成度いう点ではもう一つ(後半やや単調になる)ながら、ユニークだったしやっぱり入れておこう。