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異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

『ジョン・バーリコーン 酒と冒険の自伝的物語』 ジャック・ロンドン

 ジャック・ロンドン初読だが、これはなかなか困った本だ。
 著名な作家にも関わらずろくに経歴も知らなかったのだが、かなり破天荒な人生を送った上に40歳で自殺しているようで、本書は自伝でありそういう意味では起伏に富んだ生涯がよく現れていて、個人的に近年興味を持っている古い時代(19世紀初頭あたり)の様子が分かるということもあって実に興味深い内容である。ところでタイトルのジョン・バーリコーンというのはいわば酒の精みたいなもので、大麦とそれから作られるウィスキーやビールの様な麦芽アルコール性飲料の擬人化(ジョン・バーリーコーン - Wikipedia)のようである。イギリスのロックグループであるトラフィックの曲にも登場する

Traffic - John Barleycorn 1970 Remastered - YouTube
死によって豊穣をもたらすものということなのかな。これも興味をそそられるがそれはさておき。
 若い頃から冒険心にあふれ、体力にも恵まれていたらしく(体が強いといった記述が多々みられる)、船乗りに憧れ15歳には牡蠣泥棒の仲間に入り、その後17歳にアザラシ狩りの船乗りとして世界を航行し小笠原諸島にも行ったりしている。やがて作家として成功するのだが、その後も船に乗り旅行を楽しんでいる。若い頃の荒くれ仲間との命知らずのハチャメチャな飲んだくれエピソードの数々はかなり可笑しく、また当時の生活の様子を知ることもできる。その独特の経験から中国文化含めグローバルな見識や鋭い感性にによる終盤のアルコール依存に関するディスカッションも観念的で理解しづらくはあるものの迫力がある。瑣末になるが、巻末に登場する当時のアメリカの土地所有権の記録の記述もちょっと面白い。
 と、なかなか読みどころは多いのだが困ったところもある。冒頭から幼少時代の飲酒経験の話から始まるので、半ば予想がつくのだが案の定酒で体を壊し、明らかにアルコール依存の傾向がみられる。大酒の飲み比べなどマッチョな自慢が目立つ一方で、自分はアルコール依存ではない(文中では「アル中ではない」という表現だが。80年代の本なので)とか実は酒の味には馴染めないとか長年ジョン・バーリコーンに鍛えられただとか、何とも強がった言いわけが目立ち鼻白む。挙句の果てに酒が無い歴史の流れだったらこんなことにならなかったとか、女性選挙権に賛成したのは立派だがその理由は酒を止められるのは女性だけだからと思ったからだとか、いかにも他人任せ(の割に虚勢を張っている)のダメな人の匂いがそこかしこから漂う(変に女性を神聖視したような文章もちょっとあって、マッチョの裏返しの様な気が)。ダメな人は全然構わないんだけどこういうセンスはどうも好きになれないなあ。
 ちなみにジョン・バーリコーンを知ったのはジェフ・ヌーン花粉戦争』で、どうもネットで評判がもう一つのようなんだが個人的には結構楽しめた記憶がある。そろそろ再読したいところ。ジェフ・ヌーン(@jeffnoon)のtwitterは英語俳句みたいで(時々読んでいる程度なんだけど)なかなかいいんだよな。