異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

『スニーカー』<ナイトヴィジョン> モダンホラーセレクション

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1990年5月31日発行と書かれている。原書は1988年、NIGHT VISIONS 5とありググるとDark Harvest Booksから12まで出ているアンソロジー・シリーズだったんだね。基本3人の作家で作品数もバラバラという思いきったというかユルいところがちょっとユニークで、ハヤカワからはあと4の『ハードシェル』が出ているだけ・・・と思ったらエド・ブライアント入ってんじゃん!いやー欲しいかも(笑)。以下面白かったものに◎

スティーヴン・キング
「リブロイド」 TV番組の最中に突如現れた男・・・まあ良くある話だが、オチはアメリカ史をよく知らないと難しいな。
「スニーカー」 トイレのドアの下にのぞくスニーカー。タイトル作なんだが怖ろしいというよりなんとなく小汚い感じでもう一つだなあ。
「献辞」◎ ホテルの清掃婦マーサは息子の処女小説で献辞を捧げられる。これはなかなかにおぞましい話になっている。書くことへのオブセッションも背景にあるのかもしれない。
ダン・シモンズ
「転移」 癌で倒れた母親を見舞いに行く途中交通事故で生死をさまよったルイス。何とか回復し母親の元に訪れるが奇妙な幻覚に悩まされる。これは理屈抜きにシモンズの語り口を楽しめばいいね。
「ヴァン二・フッチは今日も元気で地獄にいる」 人気TV伝道師の番組に来ていたのは予定していたゲストではない人物だった。シモンズらしいブッキッシュなホラ話といった感じ。
「イヴァソンの穴」◎ 1863年のゲティスバーグの戦いをモチーフにしたホラー。最前線の兵士たちの愚昧な指揮官に対する怒りが共感をさそう。シモンズの3作品はそれぞれ異なるタイプで、さすがに見事な筆さばきである。
ジョージ・R・R・マーティン
「皮剥ぎ人」◎ 濃厚な人の血の臭いを感じるウィリーの描写から始まるハードボイルドミステリタッチのホラー。これは文句なく一番面白かった。こういった作品は現代では執筆時よりさらに読者が多いんじゃないかと思われ、マーティンの作家としてのセンスの確かさをあらためて感じる。ラストのところがもう一つ分かりかねたのだが・・。

 シモンズ、マーティンは刊行時はこれからの作家で、キングと一緒に読んでもらおうというような意図だったのかな。作品に多少のバラつきはあるが、今となっては豪華な顔合わせのアンソロジーになっていて読んで損のない一冊である