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異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

『世界の果ての庭』 西崎憲

 先日の<SFなんでも箱>までに読了しておこうと思ったんだけど、遅れて今になってしまった。
 副題にショート・ストーリーズとあるように、一篇一篇はショートショートかというす数頁の55の章から成り立っている。アメリカ人日本文学研究家と知り合った作家の話、母親が日に日に若返ってしまう病気になってしまった話、江戸時代の人斬りの話、江戸時代の皆川淇園と学問の名家であるその一族の話、第二次大戦敗戦後に逃走する兵隊の話、英国庭園の話が、並行して語られ、ちょっとした謎解きも加わって次第にその関連が明らかになっていく構成が巧み。ジーン・ウルフの訳者となったのもうなづける。230頁ほどの作品だが実に密度が濃く、それぞれ文体も鮮やかに入れ替わっているのも大きな読みどころ。これを1ヵ月ほどで仕上げたとは…。全体の構成の素晴らしさもさることながら、時に美しく、時に怖ろしいエピソードが宝石の様に散りばめられているところも素敵な作品。全体に漂う寂しさとはひと味違う透明な孤独感にも著者ならではで、独特の読後感がある。