異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

上野に行ってジャック・カロ展とバルテュス展観てきた

 話題のバルテュス展を観に東京美術館に行ったが上野駅からすぐの国立西洋美術館でジャック・カロ展がやっていてポスターの絵にトラップされそちらも観てきた。
 ジャック・カロは全く知らなかったが17世紀初頭の版画家。中に入ると小さい銅版画が多いので貸し出し用のルーペが置いてあった。ポスターにあったのは「二人のザンニ」]。ダイナミックなポーズがコミックの様で決まっている。この二人は喜劇役者らしく、他にも役者や道化など一般の民衆を描いたものが生き生きと描かれ楽しい。宗教的モチーフで描かれる悪魔も禍々しくて良かったし、風景も良かった。肖像はわずかだったが中では今一つな感じがした。展覧会のタイトルに<リアリズムと奇想の劇場>とあるが、非日常的なのは悪魔など聖書の題材ぐらいで奇想の方はピンとこなかった。
 バルテュスの方も先日やっていたNHKのテレビ番組を観た程度で詳しくないのだが、流石に大規模な回顧展らしく、昔に観た記憶のある絵もあった(「地中海の猫」や「トルコ風の部屋」など)。やはりバルテュスで目を惹かれるのは挑発的ともアクロバティックともいえる奇妙なポーズを取った女性画だろう。美しいが不自然なその造形は動きの一瞬をとらえるというより、放置された人形がそこにある静謐な時を描かれているように感じられた。ポール・デルヴォーと共通する様に思われる。シュルレアリスムとは距離を置いていたようだが同時代人であり、「地中海の猫」(猫が食卓についているやつ)なんかは明らかにシュールだし、絵の少女はバタイユの娘だそうだ。まあでも全体にはシュルレアリスム的なものは少なく、モディリアーニピカソと比較した方がいいのかもしれない。風景画も良かった。「モンテカルヴェッロの風景(Ⅱ)」の光る川には驚かされたが、何気ない「窓、クール・ド・ロアン」が印象的だった。
 アトリエの再現もあったが、晩年の写真での年を感じさせない和服を着こなす伊達男と眼光の鋭さが印象的で、モテモテだったのも当然だという気がした。一方、最後の伴侶である34歳年下の節子さん、NHKのテレビ番組ではトヨエツ相手にオチの部分でちょっとしたお芝居をする演出も堂に入っていて、美しいだけではない只者ならぬ空気感を漂わせていた(笑)

※追記 バルテュスの絵の動きの無い感じは石田徹也とも共通するかなあ。まあ全て印象でしかないけど。

※さらに追記 バルテュスに関しては自分と飼い猫の話を描いた「ミツ」の連作や嵐が丘の挿絵などストーリー性のあるタイプの作品もすごく良くて、イラストやコミックの世界で成功することも出来たかもしれないなーとも思った。まあそんなことを言われても本人はいい気持ちはしなかったかもしれないけど。