異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

『夢宮殿』 イスマエル・カダレ

夢宮殿 (創元ライブラリ)

夢宮殿 (創元ライブラリ)

「そこには、選別室、解釈室、筆生室、監禁室、文書保存所等が扉を閉ざして並んでいた。国民の見た夢を分類し、解釈し、国家の存亡に関わる夢を選び出すこの機関に職を得た青年は、その歯車に組み込まれていく。国家が個人の無意識の世界にまで管理の手をのばす怖るべき世界を描いた、幻想と寓意に満ちた傑作。」

 (細々と続くバーチャル世界旅行のシリーズでございます)

 夢を管理する謎の帝国。名門に生まれた主人公が朝眠りから醒め、任命の約束された<夢宮殿>に登庁する場面から始まる。全体像の見えない官僚機構の中でやがて主人公は国の根幹に潜む秘密を知ってしまう。
 この作家はアルバニア出身なのだそうだ。バルカン半島の小国であり、何度も周囲の国に侵略を受け、様々な文化が混ざり合っている。本作は架空の国の話ではあるが、解説にもある様に明らかにアルバニアを思わせる国で、キリスト教イスラム教双方の影響が垣間見え幻想的かつエキゾチックな世界が描かれているのも興味深い。またアルバニアは一時独裁政治が続いた国でもあり、その当時作者は必ずしも反体制作家ではなくむしろ重用されていたようである(最終的には国を追われた)。体制の中に居ながら疑念を感じていく主人公もまた作者自身を思わせる。抑圧された国家の状況もあったのか、寓意的に描かれる重苦しい管理国家に様々な文化の入り組み複雑な輝きを放っているところが魅力的で、ブッキシシュな要素をはらみながら一種ミステリ的な謎解きもあり、実際の国家と重ね合わせつつも普遍的な世界に広がっていく多様な解釈の出来る作品である。
 特に吟遊詩人の登場する場面に魅了されたが、その際に使用される楽器ラフタはこれではないかと思う。


Playing the Lahuta in Gjoni Tradita Restaurant in ...

 さてその他のアルバニアの話題。サッカー選手はちらほらいるみたい。あとはジョン・ベルーシはアメリカ生まれアルバニア系移民の子。マザー・テレサアルバニア系らしい。