「プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムス」 Prince急逝に伴う上映で初見。一番好きな時代なんだけどなんとなく観ていなかった。人気絶頂向かうところ敵なしだったThe Revolutionを突然解散、個人名義でアルバム"Sign of the Times"を発表しその時の少しだけドラマ仕立てになっているライヴ映画。急造に近いと思うバンドだということを微塵も感じさせないクォリティの高さに圧倒される。特に素晴らしいのがShiela Eで、ドラムにダンス躍動感あふれるパフォーマンスに目を奪われる。数多いる殿下配下の女性ミュージシャンのなかでも別格の存在であることがわかる。死のショックが癒えない時期の上映で、殿下へのファンの思いが劇場に一体感を生み素晴らしい雰囲気だった。終了後は涙があふれた。
「Bad Brains/Band in DC」 上記の「プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムス」と同じく渋谷HUMAXシネマだったかな。グループの影響力の大きさと平坦ではなかった道のり、奇行は目立つが替えのきかないフロントマンHRと周囲のあつれきなどが印象に残った。生で観たい気もするがその時のHRの状態で楽しみるかどうかは賭けに近い感じかもなあ。
「MR.DYNAMITE」 パンフレットにもあるように重要な70年代までを焦点にしたJBのドキュメント。効果的にライブ曲を挟みながら歯切れのよい編集されていてよかった。今後JBを知りたい人にスタンダードなりうる内容。プロデュースに同時代のミック・ジャガーがいるのでリスペクトしながらネガティヴな面も紹介されバランスもよい。伝説化されたタミー・ショウの裏側を話すミックのチクリとやりつつ負けを認めているところにそれが現れていた。ミックは初ソロのミュージックビデオタイアップお遊び的な映画Running Out of Luckでも遭難した言葉の通じない国で自分と気づいてもらうためにレコード屋でセルフモノマネをするシーンがあったが、今回も思いきりJBと比較映像になってて、そのあたりの分かってる感がいい。
「時間がねじくれて圧縮されたような魅力」また「Shake that floppy discの歌詞が時代を感じさせる」。「初めて打ち込みに取り組んで少し音作りに少々無理がある面も」とも("The Lord giveth and the Lord taketh away"以来6年ぶりにだったのかな?当初は相当聴きまくった当ブログ主だが今では少々力が入り過ぎていたという印象があるかな)。このアルバムは結構日本でも話題になっていたと思うが、丸屋さんが苦言を呈したようにBootsyのオタク的センスへの注目は弱かったよなー。これなんか完全にゴジラのパロディでラドンまで登場するのにね。
この一枚前1982年"The Lord giveth and the Lord taketh away"について。タイトルは聖書ヨブ記 "The Lord giveth and the Lord taketh away(主は与え、主は奪う)"からだそうで、またこのジャケットのように岩に突き刺さったベースを引き抜くというアーサー王をモチーフにしたアルバムでもある。
(といってもこの写真だけじゃわからないかも…)
あとこのThe OneはJBがFunkの基本としたThe Oneでしょうね。 Soul Deep - James Brown - The one - YouTube
このアルバムには前記した曲Countraculaも入っている。また1曲目"Shine-O-Myte"はDynamiteのシャレ(※他にもダジャレやネタ満載らしい。音的にも評価の高いアルバムだが、ちゃんと聴き直さなければ)。
2."Up for the Down Stroke"(1974) サウンドはかなりまとまり、タイトル曲は強力なファンク。ただ歌詞はget up for the down strokeを繰り返すのみ(※たしかに)でまだGeorgeらしいコンセプトはまだない。またタイトル曲はOhio Playersっぽいとも(ちなみに自伝ではOhio Playersに対して辛辣な記述がある)。
3."Chocolate City"(1975) ようやくコンセプトが前面に出る。Chocolate CityとはWashington D.C.が合衆国の首都であるにも関わらず、黒人の比率が高かったため(現在は50%ぐらい)。White Houseとの対比でもあり、郊外には白人が住んでいたためvanilla suburbsと呼ばれたりもしたようだ(歌詞にも出てくる)。当然ブラックミュージックも盛んで、当時はメジャーでなかったレコードを安く買って集めていたのがアトランタレコード創始者Ahmet Ertegun。外交官の息子だからWashington D.C.にいたわけで巡り合わせの妙。D.C.とC.C.のダジャレでもある(※この辺りはB&Bで詳しく話があり、人口比率については円グラフも登場。現在は変化しているようだが、白人の比率が非常に低かったことと大学が多くスポーツの盛んな大学があったことから若い白人はスポーツ推薦に違いないと思われていたという話があった。が、詳細については失念してしまいました失礼)。さてアルバムタイトル通り、ブラックカルチャーの偉人たちでホワイトハウスを乗っ取るという歌詞(※今でこそ偉人たちだが現役バリバリの20~40代の若い人たちで、オバマ大統領が登場した現代には理解しがたいぐらいの思い切ったアイディアだったと思われる)。あと2曲目"Right On"もいい(※同感)が、実はコンセプトといえるのは最初のタイトル曲だけなのが惜しい(※同感)。Screaming Jay Hawkinsみたいな曲もある(※"Let Me Be"だったかなー失念)。
4."Mothership Connection"(1975) Parliamentの代表作であるこのアルバムでGeorgeの本領が発揮。まとめ前半に触れた『アウターリミッツ』をパロった導入でchocolate milky wayからきた(いかにもドラッグを連想させる)Lollipop manことThe long haired suckerによる宇宙放送局WEFUNK(アメリカのラジオ局にありそうなネーミング)が地球のラジオ局を乗っ取ったということが示され、Starchildも登場しファンク欠乏症で危機に陥ったこの世界をファンクで救おうというメッセージが提出される(しかしこの後のアルバムからThe long haired suckerとStarchildが一緒になってしまい、The long haired suckerは出てこなくなってしまう) 。(※ちなみに1975年に"Chocolate City"と一緒に出て、サウンドもコンセプトも急進化を遂げていることに軽く衝撃を受けるね)
5."The Clones of Dr. Funkenstein"(1976) このアルバムではマッド・サイエンティストのDr. Funkensteinが登場。この曲"Dr. Funkenstein"のライヴ・アルバム"P-funk Earth Tour"(1977) のヴァージョンが凄い。丸屋さんご指摘の通り基本的には単純な曲なのだが観客の盛り上がりが尋常ではなく数あるポピュラー音楽のライヴ・アルバムの中でも特筆すべきものだろう(※個人的に最も好きな曲である)。
"Whoa!
They say the bigger the headache, the bigger the pill, baby
Call me the big pill
Dr Funkenstein..."
というこれまたいかにもドラッグを思わせる歌詞から始まり
"Microbiologically speaking
When I start churnin', burnin' and turnin'
I'll make your atoms move so fast
Expandin' your molecules
Causing a friction fire
Burnin' you on your neutron
Causing you to scream
'Hit me in the proton, BABY!'"
と(SFファン大喜びの)実にアヤしげな科学用語を使ってかつセクシャルな(しかも必ずしもビッグヒットがあったわけではないグループ)
の歌詞を観客が元々知っていて大合唱しているシチュエーションには本当に驚かされる。(この下りを空でいえる丸屋さんはGeorgeに感心されたそうだ。そりゃそうだ)。
そしてDr.Funkensteinのキャラクターを足がかりに、<フランケンシュタインの花嫁>にちなんでThe Brides of Funkensiten(ガールグループなので複数形)も結成、アルバムも出す。
6."Funkentelechy VS. The Placebo Syndrome"(1977) placebo syndromeは偽薬効果(placebo effect)からきているようなのでまあわかるが、Funkentelechyはどうやらentelechyからきているようでなかなか難しい。ともかく本アルバムでは実際のplacebo effectとは違い、ファンクを失わせるものらしい。ここで人気の悪役Sir Nose D'Voidoffunkが登場(devoid ofのシャレ、ファンクを欠いているということ)。ファンク度をアップするBop gunというStarchildの武器も出てくる。アルバムについているコミック(※紙ジャケボックスの『カサブランカ・イヤーズ』にもついていた)にはStarchildとSir Noseの決闘の場面がある(背中合わせで何歩か踏み出し振り向いて撃つという例のやつだが、Starchildは実は後ろにも目があるという全然公平じゃない戦い(笑)。そもそも代表曲の一つ素晴らしい"Flashlight"が眠りたいSir Noseを正義(のはずの)方がライトを使って眠らせないという話(まさしく「タケちゃんマンとブラックデビル並」)。(※一方で曲"Bop Gun"には公民権運動のキイワードWe shall overcomeやサビにendangered species絶滅危惧種なんていうアイロニカルな言葉も忍ばせているのだからGeorgeはおそろしい。クールさとユーモアが同居してるんだよね)。
1曲目のPrologueに登場する
"Quarks, gluons, red giants, white dwarfs, big bang..."
giants, dwarfはファンタジーのそれではなく赤色巨星、白色矮星と(※歌詞というより語りだけどこんな内容だったのか。これまた気づいていなかったSFファン失格じゃのう)。他に"The Big Bang Theory"に"Theme from the Big Hole"と宇宙ネタが続く※全然関係ないが当ブログ主が大好きなLabelleにも"Black Holes in the Sky"(アルバム"Pheonix"収録)という佳曲があるぞ!)。ただGeorgeが歴代No.1と評したGlenn Goins(※1978年にわずか34歳で悪性リンパ腫で逝去)を失って、ヴォーカルがマイクスタンド交代のSly&The Family Stoneのようになったのが弱くそのためインストの"The Big Bang Theory"がかえってよく感じられる、とも。またシンセベースとハンドクラップが使われるところで、当時のハンドクラップがまだ本当にハンドクラップをして録音されていて話も出た(※Zappだったか誰か失念してしまったが、ハンドクラップ用の録音部屋があったらしい)。一番面白かったのは中についているコミック。まだfunkyになっていないSir Noseに外部装着型の<つけ尻>をつけてfunkyにしちゃうという話(※細かい点は失念ご容赦。上記bmrによると敗北を悟ったSir Noseが身につけてもらったという展開だったようだ。またtwitterのやり取りで「尻が大きくなってfunkyのイメージなのでは」との指摘をいただいた。なるほど!ありがとうございました!)
また90年前後にP-Funk系のコスプレをしていてコンサート会場でミュージックマガジンの人に声をかけられた。またBootsyのコンサートにいつもそのコスプレでいることから初来日時にもステージに上げられるなどお馴染みな存在となっていて、会う機会もあったのでBootsyのアルバム"The One Giveth, the Count Taketh Away"のコンセプトに習って、アーサー王の最後の部分を自らに当てはめた英語のオリジナル・ファンク・ストーリーを作ってBootsyに見てもらいほめられ、英語や文章に自信を持ったのがはじまりとのこと。またP-Funkコミックの関西弁翻訳を送ったのがBMR採用のきっかけ、ということでP-Funkと丸屋さんの縁は深いとのこと(コミックの話題はB&Bでも出ていて、たしかBootsy's New Rubber Band"Blasters's of the Universe"についていたコミックということだったと思う)。※コミックについてウィリアム・テル風と以前記載していたが、間違いだったので削除しました(2016年11月28日訂正)
さてこのGeorge Clinton、音楽グループのリーダーとしては少々変わっていて、ヴォーカルではあるが歌は下手、楽器はできない、楽譜は読めない書けない、曲は書けるもののコーラス理論がわかっていないためにできるのはバリトンベースとそれ以外といったわけ方程度。とないない尽くしのお方なのだが、不思議なカリスマ性で(とても人格者ともいえないのに)人心掌握力があり、造語能力とコンセプト作りに長けていることで成功した(ただ床屋なので散髪はできる(笑)。「ニュージャージーで最も危険なストレート・パーマ屋」といわれ、<危険>とはギリギリまでストレートにするの意)丸屋さんは項羽と劉邦でいけば、劉邦であると(個人戦・組織戦とも強い項羽はPrince。当然ケン・リュウ『蒲公英(ダンデライオン)王朝記』への言及あり!)。ちなみにTemptationsのリーダー(※Otis Williamsだろうか)も滅多にリードをとらないとのことで、黒人コーラスグループのリーダーシップの在り方なのかもしれないとのこと。
さてここから2回のトークショーの話が中心になるが、上記のように音楽紹介の英語面での弱さから、P-Funkのストーリー的な側面への掘り下げ不足ということがこれまであり、それを補うところが丸屋さんの真骨頂。ということで、コンセプト的そしてストーリー的また歌詞的な面白さの紹介に焦点が置かれ、具体的な曲などへの言及はBootsyのアルバムの一部とParliamentのアルバムについてであった。
それを順を追って整理していこうと思うが、総論的な意味で興味深かったのはまずBootsyとGeorgeのセンスの違い。Bootsyがネタにしてきたのはゴジラ、キャスパー、赤ずきんちゃん、ロビンフッド、キリスト、アーサー王、Countracula(※Count von Count セサミストリートの数字を数える人気キャラ。Count Dracula(Count = 伯爵)を計算の方とひっかけての名前。話し方にどことなく中~東欧訛りっぽい感じがある気がするがどうだろうか www.youtube.com)、など比較的明るいキャラクターが目立つとのこと(Bootsyだもんなあ納得)。目から鱗だったのは(※unionで出た話題だったかな?)上記のBootsy+GodzillaのBootzillaはゼンマイ仕掛けのオモチャ。だからWind me upという歌詞が出てくるのだという指摘!いやなるほどねえ(Wind me upはBootsyの決めゼリフでしばしば登場する、「ねじを巻く」でここを見ると必ずしもポジティヴな言葉じゃないんだよな。だからこそゼンマイ仕掛けのオモチャだと思うとしっくりくる。ちなみにさっきのweb辞書にwind up a rubber band
(〔模型などの〕輪ゴムを巻く)という例もあり、Bootsyのバンド名とも一致するではないか!)。ともかく全体に陽性なBootsyらしいコンセプトになんだなと感じる。
一方Georgeの場合TVドラマ『アウターリミッツ』(冒頭の言葉「TVの故障ではありません・・・」が"Mothership Connection"のアルバム冒頭曲で「ラジオの故障ではありません・・・」としてパロディ化されている)。
The Outer Limits intro
"There is nothing wrong with your television set. Do not attempt to adjust the picture. We are controlling transmission. …" www.youtube.com
Parliament"P. Funk (Wants to Get Funked Up)"
"Do not attempt to adjust your radio, there is nothing wrong.
We have taken control as to bring you this special show.
We will return it to you as soon as you are grooving...″